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長内 厚のエレキの深層

VAIOフォンの小さな反抗がもたらす
携帯キャリア独占の「終わりの始まり」

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第4回】 2016年2月29日
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注目決算発表が相次いだ怒濤の2月4日、
VAIOが満を持して発表した新スマホ

VAIOが発表した新スマホは、日本の携帯キャリアの独占状態に「終わりの始まり」をもたらすかもしれない。新製品に込められた「小さな反抗」を考察しよう

 2月4日、ソニーから分離独立したPCメーカー、VAIO株式会社が新しいスマートフォン「VAIO Phone Biz」の発表会を行った。2月4日である。2月4日といえば、シャープが鴻海との提携交渉に言及した第3四半期の決算発表会の日であり、かつ、同日にはこれまた経営改革案発表で注目された東芝の決算発表会の日でもあった。

 3つのイベントのうち、VAIOの発表会だけが先に決まっていた。

 「げげっ!誰も来なかったらどうしよう!!」

 筆者が知り合いの新聞記者、VAIOの広報担当者、会社員時代の先輩の4人でお茶をしているときに、新聞記者から「あ、シャープさん、2月4日決算発表だそうですよ」という情報がもたらされ、不安になったのがVAIO広報の担当者であった。

 「大丈夫、僕はいきますよ(何の役にも立たないけど……)」と冗談を言いつつ迎えた2月4日――。

 秋葉原のVAIOの製品発表会会場は満員御礼であった。ギリギリに会場入りした筆者はVAIOを見くびっていたのかもしれない。確かに、スマートフォンの発表会に来るITガジェット系の記者と、シャープの発表会に行く経済部記者とは属性が違うのかもしれない。しかし、質疑応答を見る限り、大手新聞、テレビ、通信社などの経済部記者も多くの質問を投げかけており、先の広報担当者の心配は杞憂だったようである。ソニーから分離されたVAIOは規模で言えば極めて小さい企業であるが、いまだにメディアの関心を惹く何かを持っているのだろう。

ここからが
本当のVAIOフォンの始まり

 筆者はVAIOがスマートフォンやタブレットを出すなら、OSはWindowsベースだろうとふんでいたが、実際には2014年の春に、AndroidベースのSIMフリー「VAIO Phone」が発売された。だが、このAndroidベースのスマートフォンはODM供給だとのことで、デザインもどこかで見たことのあるものである。知り合いの新聞記者によると「(Androidベースの1号機は)供給先のb-mobile(日本通信)の要望が強く、VAIOの名義貸しに近いOEMだった」という見解もあるという。

 いずれにしても、この微妙な立ち位置の初代「VAIO Phone」は、発売当初から不評で、それはVAIOに対する期待を裏切る平凡な製品であったことが要因であると、日経トレンディオンラインの記事(2016年2月10日「「VAIO Phone」の不評から約1年、VAIOがスマホにこだわり続ける理由とは」)は分析している。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

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