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経営者のITへの理解と説明力が
企業価値を大きく左右する時代に

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第54回】 2016年3月4日
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企業におけるITの利活用や運営状況を、株主や投資家といった社外のステークホルダーに対して積極的に情報発信するIT-IRの普及活動が推し進められている。今回は、2015年12月に経済産業省が公表した「攻めのIT-IRガイドライン」を紹介し、企業に求められる対応について述べる。

IT-IR推進の経緯と
その目的

 アベノミクス第2ステージとして2015年6月に発表された「日本再興戦略」改訂2015では、設備革新にとどまらない技術や人材を含めた「未来投資による生産性革命の実現」と、日本全国隅々まで人材や資金、それを支える技術や情報が自由・活発に行き交う「ローカル・アベノミクスの推進」を車の両輪と位置づけている。

 また「未来投資による生産性革命の実現」の中では、第一ステージから重要とされてきた「稼ぐ力」を高める企業行動として、攻めのコーポレートガバナンスの強化やイノベーション・ベンチャーの創出が着目されている。そして、IoT・ビッグデータ・人工知能時代の到来を第四次産業革命と位置づけて新時代への挑戦を加速するとしている。

 一方、第一ステージから日本経済再生本部の下部組織である「産業競争力会議」で成長戦略の具体化が進められている。「守り」から「攻め」へのIT投資の「質」の転換が重要であると位置づけ、その一環として経済産業省と東京証券取引所が「攻めのIT経営銘柄」を創設し、2015年5月にその第1回目を発表した。

 そして、新たな取り組みとして、各企業が投資家などに向けてIT活用に関する情報発信をする際の参考にすることを目指した「攻めのIT-IRガイドライン」の策定が進められ、同年12月に公表された。ちなみにIR(Investor Relations)は、企業が株主や投資家に対し、財務状況など投資の判断に必要な情報を提供する活動全般を指す。

 本ガイドラインは、企業の「攻めのIT経営」の姿勢をより客観的に投資家の視点から評価するために、各企業が投資家に向けてIT活用に関する情報発信をする際の参考となることを目指したものである。

 また、決算時に策定するIR情報(統合報告書、アニュアルレポート、Webサイトなど)の中に、IT経営の内容を盛り込む事を推奨している。すなわち、株主や投資家といった社外のステークホルダーに対して自社のITの利活用の状況や投資姿勢を積極的に情報発信することを通じて、経営者を含む会社全体における「攻めのIT経営」への認識を高めようとする意図が読み取れる。

 本連載第51回「自社の「IT白書」を作って社内外への説明責任を果たすべきだ」では、IT部門の活動に関する説明責任と啓発に向けて「IT白書」の作成を推奨したが、IT-IRは、この活動を広く社外向けに発展させるものと位置づけられる。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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