被災地の仮設住宅で引きこもってしまう人々震災から5年経つ一方、住民の孤独化が静かに進んでいる

 東日本大震災から5年。被災地ではいま、仮設住宅に残される人たちほど生活状況が厳しく、孤立などで課題の深刻さも見えなくなりつつある。

 今月7日にも、岩手県釜石市の仮設住宅の室内で、80歳代の女性の遺体が見つかり、同居する50歳代の息子も衰弱状態で発見されたため、病院に搬送されるという出来事があった。親子は2人暮らしで、このところ周囲の面会を拒むなど、部屋に「引きこもり」状態にあったという。

静かに進む石巻市民の孤独
仮設住宅で「引きこもり」が増えている

 筆者が震災直後からたびたび訪れている宮城県石巻市は、最大の被災地だ。約3700人の死亡・行方不明者を出し、いまも多くの被災者たちが仮設住宅での生活を余儀なくされている。貧困の度合いも深刻だ。

「自力再建できる方々は仮設を出て行きました。一方で、課題の重い方たちが仮設に残されているような状況です」

 そう説明するのは、NPO「Switch」石巻NOTE統括プロデューサーの今野純太郎さん。石巻駅前に拠点を設けた「ユースサポートカレッジ石巻NOTE」では、復興庁の「心の復興事業」の一環で、市の郊外に「イシノマキ・ファーム」という農園を「中間的就労の場」として開園させるとともに、市内のいくつかの仮設住宅への訪問活動も行っている。

 昨年末の調査によると、石巻市内には9300人あまりがいまも仮設住宅に居住している。また、災害復興住宅の入居者は約5500人に上る。