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大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

セウォル号遺族とも面会、震災4年半・大川小遺族のいま

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第49回】 2015年9月11日
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4月26日に、セウォル号の遺族、大邱地下鉄火災事故の遺族との懇談が行われた(大阪市内)
Photo by Yoriko Kato

 「俺たちは遠慮しすぎていたってことがわかった」

 今年4月26日、大阪市内のホテルで開かれた会合に出席した大川小児童遺族の佐藤和隆さんは、話し合いの感触を確かめるように、そう話した。

 佐藤さんは大川小で、当時6年生だった三男・雄樹君を亡くした。

 この日、佐藤さんら大川小の遺族と顔を合わせたのは、前年の4月16日に韓国・珍島沖に沈んだ大型旅客船「セウォル号」で、修学旅行中の檀園高校生の子どもを亡くした3家族4人と「大邱地下鉄火災事件」の遺族3人。。前日の25日に、事故から10年を迎えたJR福知山線の脱線事故の追悼集会に参加するために来日していた。

 引き合わせたのは、JR福知山線の遺族の藤崎光子さんと支援者、学校事件・事故の遺族らだ。セウォル号の遺族が大川小の遺族と会うことを希望し、メディアには非公開を条件に顔合わせが実現した。

 津波が来る直前までの約50分間、避難の指示を待ち、校庭で待機していた大川小と、沈みゆく船内で、指示通り救出を待ち続けたセウォル号。子どもたちが直面したであろう恐怖を想像しながら2つの事故に共通する点を確かめると、一気に打ち解けた。

 事故後の苦しみを分かち、励ましあった。話の内容は、事故検証、安全であるべき現場での組織の安全管理体制の問題など、事故後の対応のあり方や国や組織の構造の課題にまで及んだ。国を超え、安全文化を共有していこうというセウォル号の遺族の呼びかけに、大川小の遺族も大きくうなずいた。

遺族として顔を上げて生きる
セウォル号の遺族たち

セウォル号の遺族から黄色いリボンを渡される大川小の遺族
Photo by Y.K.

 セウォル号で、高校2年の息子、イ・チャンヒョン君が犠牲になった母親のチェ・スンファさんは、頭にニット帽をかぶった姿で会合に臨んだ。多額の賠償金で事態収拾を優先しようとする韓国政府に抗議する大規模なデモに参加し、船体の引き上げや本質的な真相究明を求めて髪を剃りあげたひとりだ。

(参照:「セウォル号沈没事故から1年 遺族はなぜ、丸刈りになって抗議するのか」/ハフィントンポスト)

 他の会合参加者らもみな、セウォル号の死者・行方不明者の哀悼を意味するリボンやリストバンドなど、黄色いものを身につけていた。遺族や関係者、支援者であることがわかる目印だ。

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

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