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DOL経営解説委員会~経営の達人が教えるリーダーの教養

ビジネスパーソンも意識すべき
日本と世界の深刻な「時間格差」

川本裕子・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授

川本裕子 [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]
【第12回】 2016年3月18日
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日本と世界の「情報の時間格差」「認識のずれ」は、想像以上に深刻だ。ますますグローバルコミュニケーションが求められる日本のビジネスパーソンは、この事実をどう認識すべきか

 ビジネスにおいて、世界の情勢をリアルタイムで知ることがますます重要になっていることは改めて述べるまでもありません。インターネットの普及で、世界の色々なニュースが一瞬でスマホに飛び込んできます。金融市場はもとより、販売も製造も世界中で行っている企業が多い今日この頃です。

 その時々の売れ筋の商品は何か、どの国で部品を購入するのが最適か、などに即時に応えなければならない企業にとって、世界で今、何が起こっているのかをいかに正確に知るかが死活を分けるときさえあります。短期的な情報だけでなく、中長期のトレンドを探る上でも、多様な文化や制度の下にある人々が今何を話題にしているのか、楽しみや悩みは何なのかを知ることも、きっと企業経営に役立つはずです。

 しかし、私たち日本人が通常の日本語環境の世界で暮らしていると、実は世界の実相からは「ずれ」が生じる場合が多々あります。この「ずれ」に我々が気づかなければ、企業経営でさえ大きな過ちに陥るかもしれません。

日本語への翻訳で生まれる
日本と世界の「時間格差」

 まず、世界との時間の「ずれ」についてです。通信社などでは、たくさんの翻訳者やマルチリンガル記者を抱えて、一瞬のうちに、世界のニュースを日本語で配信します。しかし、多くの人が使う英語から日本語になるのには、たとえ数十分、あるいは数分だとしても「翻訳する」時間がかかります。分析的な記事や複雑な出来事だと、もっと時間差があります。瞬時を争うビジネスマン、ビジネスウーマンの世界では、英語オリジナルからすぐに情報を得るべきでしょう。

 それでもニュースであれば、せいぜい数時間の遅れだと言えるかもしれませんが、世界で話題となった本の日本語への翻訳には随分時間がかかっています。たとえば、日本では2015年にブームになった、トム・ピケティの『21世紀の資本』は、もともと2年前の2013年にフランス語で出版されました。2014年3月に英語版が発売された時点で、すでに世界各所で大論争を生んだのです。2014年12月の日本語版発売時には、世界の議論はかなり収束していた気配もありました。

 同書はそこから1年を経て、日本経済新聞社の2015年末の「経済図書ベスト10」の1つに選ばれたのですが、選者の中には「2014年のヒット作と受け止めている」という声もありました。

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川本裕子(かわもと・ゆうこ) [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]

東京大学文学部社会心理学科卒業。英オックスフォード大学大学院開発経済学修士修了。東京銀行を経て、1988年マッキンゼー東京支社入社、95-99年のパリ勤務を経て、2001年シニアエクスパート。2004年から現職。これまでに金融審議会委員、金融庁顧問(金融問題タスクフォースメンバー)、道路公団民営化推進委員会委員、総務省参与(年金記録問題検証委員会)、経済財政諮問会議専門委員、国家公安委員などの政府委員や、取引所、金融機関、証券、保険、製造業、商社、IT企業、海外メディア企業などの社外取締役や社外監査役を務めた。日本コーポレートガバナンスネットワーク理事。近書に『金融機関マネジメント』(2015年、東洋経済新報社)など。


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企業経営に携わるリーダーたちには、経営戦略、ガバナンス、リーダーシップ、組織、イノベーション・マネジメント、そして自社を取り巻く経済環境の分析など、経営に関する様々な分野の知識が求められる。当連載では、企業経営に携わる読者に対し、経営学の教授、コンサルタント、実業家など「経営の第一人者」と呼ばれる識者たちが、「特任解説員」として専門分野における重要テーマを解説していく。彼らの提言からは、企業経営に関する深い教養を得られるはずだ。
 

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