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日本を元気にする経営学教室

日本的経営システム再考
企業の活性化に必要な継続的取引の再構築
京都大学大学院経営管理研究部教授 成生 達彦

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第7回】 2010年7月26日
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 1980年代後半に持て囃された「日本的経営システム」は、バブルの崩壊とともに急速に色あせ、近年では話題にすら上らなくなっている。ここで日本的経営システムとは、終身雇用制や系列関係など、長期にわたる継続的な取引関係にもとづく経営の仕組みである。90年代に入ると、不況下で価格志向を強めた消費者ニーズの変化に対応するために、ヒトや部品のアウトソーシングなど、短期的な調整が可能なスポット市場のウェイトが大きくなっている。

 財やサービスの市場(販売)動向は重視しなければならないが(売れないものを作っても意味がない)、事業に必要な人的・物的資源(ヒトやモノ)をすべて市場で調達するというのはどうだろうか?

 今回は日本的経営システムについて検討し、市場と継続的取引関係をいかにバランス良く併用するかについて考えてみよう。

取引に費用がかからないなら
企業という組織は必要ない

 このことを考える取っ掛かりは、企業はなぜ存在するのか、という問題である。この問題に対して、1991年にノーベル賞を受賞したコース(R. H. Coase)は、受賞の対象となった論文の1つである「企業の本質(The Nature of the Firm)」の中で、次のように論じている。

 仮に市場での取引に費用がかからないのであれば、企業という(永続性のある階層的な)組織は必要ない。ある日の朝、事業に必要な人的・物的資源を市場で調達し、それを用いて事業を行い、夕方には解散する。これを毎日繰り返せばよいのである。ある日、事業環境が変化し、事業に必要な人的・物的資源が変われば、翌日からそれらを市場で調達すればよい。

 逆に言えば、企業という組織が存在するのは、市場での取引に費用がかかるからである。実際、適切な取引相手を探し、彼らと交渉することによって適切な価格を見つけ、取引契約を結んでそれを履行するためには、それなりの費用がかかる。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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