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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平が洪秀柱へ送った「祝電」に、
中台関係をめぐる違和感を覚えた

加藤嘉一
【第73回】 2016年3月29日
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新国民党主席・洪秀柱に対して
習近平が送った祝電に込められた意図

先日、台湾国民党の新主席に選ばれた洪秀柱氏に対して、中国共産党の習近平総書記は祝電を打っている。こうした行動の背景に、筆者は中台関係をめぐる違和感を覚えた Photo:ロイター/アフロ

 3月26日、週末真っ只中の北京に身を委ねていると、あるニュースが飛び込んできた。

 「洪秀柱当選国民党主席」

 今年1月、台湾で行われた総統・立法委員ダブル選挙で大敗した責任を取って、国民党主席の職を辞任した朱立倫の後任を決める選挙で、洪秀柱女史が新たな国民党主席に当選した(得票率:56.16%)。同主席の座を辞任した馬英九、朱立倫両氏が全うしなかった2017年8月までの任期を務めることになる。

 ほぼ同時に、もう1つのニュースが中国メディアウェブ版のヘッドラインを飾った。

 「習近平電祝洪秀柱当選国民党主席」

 “中国共産党中央委員会”と記された公式な用紙に、台北の中国国民党中央員会、洪秀柱女士(筆者注:“女士”は中国語でMs.を指す)宛てに以下の祝電が送られた。名義は中国共産党中央委員会総書記・習近平。力強さと図太さを感じさせる繁体字の直筆サイン付きである。

 「2008年以来、貴党・我党と両岸の双方は、力を合わせ、両岸関係の平和的、発展的、良好的な局面を切り開いてきた。両岸の同胞がそこから果実を得、私たちの仕事は広範な肯定を得た。昨今の両岸関係は新たな情勢に直面しているが、両党が民族の大義と同胞の福祉を念頭に置き、“九二コンセンサス”を堅持し、“台湾独立”に反対し、相互信頼の基礎と相互の交流を強化し、共に両岸関係の平和・発展と台湾海峡の安定という成果を守っていくこと、そして心を同じくし、中華民族の偉大なる復興を実現するために努力・奮闘することを切に願う次第である」

 習近平総書記からの祝電に対して、洪秀柱主席はすぐさま復電を送った。“中国国民党中央委員会”と記された公式な用紙に、中国共産党中央委員会総書記・習近平宛に以下の復電が送られた。名義は中国国民党主席・洪秀柱。太字でずっしりと書かれた習近平のそれとは異なり、洪秀柱の直筆サインは、シンプルだがどこか女性らしさを感じさせる細字であった。

 「2008年、我党が再び執政して以来、“九二コンセンサス”の基礎の下、両岸関係の平和的発展を推進し、両岸・両委員会は多くの協定を結んだ。直行便と中国からの観光客の開放、およびECFA(両岸経済協力枠組会議)などである。この成果は決して容易に得られたものではなく、効果は皆が見ての通りである。

 この肝心な時期、我党は重大な挑戦に直面しているが、私は責任を持って党全員を率いて団結・努力し、新たな未来に向かって邁進していく所存である。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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