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中国と距離を置く台湾新政権に習近平はどう出るか

加藤嘉一(国際コラムニスト)

加藤嘉一
2016年1月26日
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台湾総統選挙で、中国とは距離を置く野党・民進党の蔡英文氏が圧勝した。2015年のGDP成長率が7%割れした中国に、台湾の新政権誕生はどのようなインパクトをもたらすのか。

経済再建が急務の蔡英文新政権。日米主導のTPPにどうコミットしてくるだろうか(上) Photo:REUTERS/アフロ
支持者集会では「台湾元年」「台湾初代総統蔡英文」など“台湾独立”を求めるプラカードも見られた(下)Photo:Yoshikazu Kato

 「総統好! 総統好!」──。総統選挙を翌日に控えた1月15日夜、台湾総統府前の広場で行われた民進党の「造勢晩会」。雨が降り続ける中、会場に集った同党の支持者たちは、すでに蔡英文民進党主席が次期総統に決まったかのような口調で、「総統、こんばんは!」と叫んでいた。

 隣にいた台湾人ジャーナリストの林育立氏は「見てください。民進党の支持基盤は、従来の低所得層中心から、確実に中産階級にまで広がっています」と興奮気味に漏らした。蔡氏は「改革」「自由民主主義」「新しい台湾」などをキーワードに、有権者たちに「明日は何が何でも投票に行ってください!」と懇願していた。

 結果は、蔡氏が689万票(得票率56.12%)を獲得。現与党・国民党候補者、朱立倫氏の381万票(得票率31.04%)を大きく上回り、初の女性総統に当選した。同時に行われた立法委員選挙においても、民進党は計113議席のうち68議席(前回プラス28議席)を勝ち取り、単独過半数を獲得。民進党は総統府・立法院両方で実権を握る“完全執政”が出来ることとなった。

 国民党の大敗を招いた要因は三つあると私は考えている。

 第1は、「馬英九総統と立法院長・王金平氏の確執による政策実行の停滞と怠慢、金権政治の横行、統一地方選挙での大敗などが、有権者の馬英九氏への嫌悪感と国民党への抵抗感を招いた」(国民党幹部)こと。

 第2は、今回の選挙で主な焦点となった経済社会問題である。国民党執政下における台湾経済は、伸びない成長率(2015年第3四半期はマイナス成長)や国民所得、産業構造転換の遅れに象徴される。「国民党は社会の変化や若者の心情に関心を示さない」(国立台湾大学政治学部学生)。選挙の前後、台湾の知識人たちはメディアで「台湾は過去において優秀な経済プレーヤーだったが、今では競争力は見る影もない」と嘆いていた。

 第3は、過度な中国依存に対する懸念である。成功大学法律学部の許忠信教授は「自由時報」の取材に対して、「両岸経済協力枠組協議(ECFA)の締結以来、中国との関係が深まるにつれて、台湾の民間投資は逆に衰退し、外資も入ってこなくなり、国内経済は停滞し、所得も伸びない。新しい政府はまずは両岸の経済関係をクールダウンさせ、欧米や日本など先進国家との貿易関係を強化すべきだ」(1月17日紙面)と答えている。

 このように、国民党の腐敗と劣化、経済社会の停滞と不安、行き過ぎた中国への傾注という認識が有権者の間で広まったことが、民進党の歴史的大勝をもたらしたといえる。

 民進党大勝という結果を受けて、習近平国家主席率いる中国共産党はどのように動いてくるだろうか。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


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