来春より、すべての携帯端末で「SIMロック」(特定の通信事業者の端末しか使えない仕組み)を解除できるようにすると明かしたNTTドコモの動向が注目を集めている。その伏線として、好調なスマートフォン(多機能携帯電話)の拡充や、設備投資の前倒しなどが進む。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

─現在、たった一つの認定枠をめぐって、2012年春から始まる「次世代携帯端末向け放送」の事業者選定が大詰めを迎えている。当初の予定よりは選定が遅れているが、あらためて“NTTドコモ陣営”の強みは何か?

NTTドコモ 山田隆持社長インタビュー<br />「3.9Gの開発は需要急増に合わせ<br />5年の投資計画を3年に前倒しする」山田隆持 (Ryuji Yamada)
NTTドコモ社長
1948年、兵庫県生まれ。73年、大阪大学大学院修了後、日本電信電話公社(現NTT)に入社。長年、技術畑を歩いたが、2002年にNTT西日本で常務取締役営業本部長を経験。04年、NTT(持ち株会社)の副社長を経て、07年にNTTドコモ副社長に転じ、翌08年には同社長に就任。阪神タイガースの大ファン。
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 私たち、「マルチメディア放送」陣営は、こう考えている。

 まず、成功するカギは、安定的によいコンテンツを確保できること。次に、利用するための料金がリーズナブルであること。そして、対応する端末が豊富に揃っていること。これら三つの要素は、絶対に欠かせないと考えている。

─この件で対抗勢力となるKDDI陣営は米国の半導体メーカーのクアルコムと連携し、865の基地局を計画する。一方ドコモは、フジテレビジョンなど国内の放送局や総合商社と組み、125の基地局を計画している。設備投資の考え方は、KDDI陣営が“通信の論理”なら、ドコモ陣営は“放送の論理”と言える。なぜ、数がそんなに違うのか?

 ドコモ陣営は、その点がポイントになると考えて、消費者の利用料金を下げることから発想した。

 たとえば、09年5月からドコモがエイベックス・エンタテインメントと一緒に始めた携帯電話専用放送局「BeeTV」は、すでに会員数が120万人を超えた。ドコモ陣営は、この経験に学んだ。