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トンデモ人事部が会社を壊す

怠慢人事部の仰天発想「ポストがないから優秀になられても困る」

山口 博
【第42回】 2016年4月5日
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ラインを外れれば用なし!?
シニア層を飼い殺す人事部の怠慢

 企業の幹部と、社員の能力開発の必要性を話し合う機会が多い。その際に、私には意外に思えるリアクションを受けることがある。一例が、大手企業の幹部の次のような見解だ。

 「ラインをはずれたシニア社員を能力開発すると、既存ラインのビジネスを荒らすことになりかねないので、能力開発の機会を与えたくありません」

ポストが足りないから、社員の能力が上がったら困る−−。錚々たる大企業の役員ですら、当然のようにこう考えていたりするのだから、驚くばかりだ

 この会社は、既存のビジネスを、従来から組まれているラインによる体制で展開している。

 ラインからはずれたシニア層が、既存ラインの方針や体制に対して悪影響を与えることを懸念しているのだ。そこで、既存ラインのメンバーが担当しない業務に、シニア層を専念させているという。

 「シニア層が経験をふまえて、建設的なアイデアを言ってくれることはないのですか」と問うと、「たいていラインをはずれた当初は、さまざまな意見を言ってきますよ。アイデアも出してきますね。しかし、数年放置しておくと、言ってこなくなりますね」と説明してくれた。その口ぶりは、数年放置することは体制維持のために必要だという確信にあふれ、懸念や迷いはみじんも窺えなかった。

 私が「(『数年放置しておく』ということは)シニア層の意見を業務に反映させることはないのですか」と問うと、「ありませんね。既存のラインを実際に変えることはありません」と言う。「シニア層のモチベーションが下がりませんか」と問うと、「モチベーションを下げてはいけないので、一応聞きおきますし、改善提案を挙げさせて表彰することもありますから、大丈夫です」ということであった。

 ラインにいる読者のみなさんは、この大手企業の幹部の発言を、どうお感じになるだろうか。「大手企業幹部の言うとおりだ。ラインからはずれたシニア層に口出しされることがビジネスを停滞させる」という声も聞こうえそうだ。

 しかし私には、シニア層を全く活用できておらず、もてあましている姿にしかみえない。そして、意見を聞くポーズや改善提案で表彰することで、モチベーション維持を図っているというアリバイをつくり、シニア層という経営リソースを放置するという大罪を糊塗しているようにしか見えない。あまつさえ、意見があれば聞く、形ばかりの表彰をするなどというまやかしは、何の効果ももたらさないどころか、嫌味であるとも受け取られかねない。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

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