ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

増税延期はむしろ日本経済を悪くする

危機バネの活用と経済リテラシーの強化を

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第33回】 2016年4月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

経済政策とは「医療」のようなものだ

 2017年4月に予定されている消費税引き上げの延期を望む声がある。しかし、それこそ、かえって日本経済をさらに悪化させる可能性が高い。財政の更なる悪化はいうまでもないが、国民の前向きかつ真面目な気持ちを弱めてしまうだろう。病気の治療と一緒で、逆に危機感を自覚し、改革への動機付けをし、さらに成長に転ずる「危機バネ」を活用することこそが、現在必要な戦略と考える。

 筆者は経済政策の考え方は“医療”のようなものだと考えている。健康体で生活しているときには日々の生活習慣について心掛けるだけでよいが、病気になったときには治療が必要となる。苦い薬を飲み、痛い手術を受けなければならない。良薬、口に苦しなのだ。病気になったときに何も変えずに放置して生活すると、さらに病気(病巣)は悪化する。

 日本経済が、病気で体力が落ちている状況なのは疑いの無いところであろう。しかも、現在、国民が全ての“痛み”や“苦さ”を避けたがる傾向がある。リスクを取った痛い手術などはもってのほか、というわけだ。これでは、まず病気は治らない。

日本の「病状」はかなり悪い

 日本の財政赤字は現在、ダントツの世界一である。しかも、まだまだ増えており、概数で申し上げるが当面年40~45兆円ペースで増加する。最近の国の歳出・歳入は、歳出が95兆円(今年度予算はさらに膨れ98兆円)、税収が50兆円(同じく景気がやや回復したことから増加して55兆円)。差額の赤字分45兆円は、新発国債などで資金を集めるしかない。

 これはたとえば月給50万円の会社員が毎月95万円使うようなものだ。しかも何年もそれを続けている。いろいろ事情はあるだろうが、通常の感覚ならば明らかにおかしいと思うのではないか。おかしいと思わない方がおかしい。自分の部下や子供だったら、きっと注意したくなるであろう。

 財政赤字は借金である。一部に「資産があるから問題ない」と考え、問題視しない向きもある。しかし企業・個人の場合、借金が何年も続けてどんどん増えていく企業・個人はどうなのか、ということだ。たとえば銀行員であったら、追加貸出に対して不安に思うのではないか。まず、借金は返すべきなのである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
Facebook宿輪ゼミ:https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/
公式サイト:http://www.shukuwa.jp/    
連絡先: info@shukuwa.jp

 


宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

「宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説」

⇒バックナンバー一覧