どうして工学部を選んだんですか?

川村 ところで、川上さんは京都大学を卒業されていますが、工学部に行こうと思ったのはどうしてですか?
川上 そこしか通らなかったんです。もともと歴史とか社会とか文系も好きだったし、数学とか物理とか理系も好きだったんですが、高校で文系コースか理系コースか選ばなければならなくなって、理系コースを選びました。文転はできるけど、理転はできないと思ったのが理由です。

川村 そういう進路の選び方もあるんですね。
川上 大学に行くときも、航空工学とか物理とか土木とか、いろいろな学科がありましたけど、入る前からどこが面白いかなんて、わからないじゃないですか。

川村 確かにそうですよね。
川上 だから、東京大学の理科一類という、1年半は理系全般の教養をやって大学2年の後期から内定した学科で専門教育を学ぶ、ざっくりしたところに行こうと思っていたんですが、見事に落ちたんです。

川村 浪人してまで東大に行こうとは思わなかったんですか?
川上 思わなかったですね。

川村 主体性がないから?
川上 そうですね。僕は運命論者でもあるので、基本的には運命を受け入れます。

川村 工学部はある種の成り行きで行ったっていうことなんでしょうか?
川上 完全に成り行きですよ。だって、理系の学問の中で何が一番嫌いだったかって、化学でしたから。

川村 入った後は真面目に勉強する学生だったんですか?
川上 いや、全然。

川村 となると、何を勉強したら、川上さんみたいな人になれるんでしょうか?
川上 中学校の頃からずっとプログラミングはやってましたね。

川村 「BASIC」(※1980年頃に登場した初期のパソコン用に開発されたプログラム言語)を打ち込んで、ゲームを完成させて楽しむみたいなことですか?
川上 そうです。

川村 僕の親しい理系人で、川上さんくらいから下の世代の方々は、だいたい、BASICをやっていますね。
川上 共通点は親にファミコンを買ってもらえなかった人たちだと思いますよ。ファミコンはだめだけど、パソコンならいいよと。要するにパソコンでゲームを作ってやるしかなかったってことです。