米国経済の回復ペースが鈍化している。4~6月期のGDP伸び率は1~3月期に比べて1.3ポイント低い2.4%に減速し、失速の懸念も高まっている。クリーブランド連邦準備銀行のW・リー・ホスキンス元総裁は、二番底に陥る可能性を20%程度と比較的低く見積もるが、その一方でオバマ政権の市場介入主義的な経済運営が続けば、米国経済の長期低迷は避けられないと主張する。
(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)
―7月の議会証言でFRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は、米経済の見通しについて「異例なほど不確実」と発言したが、あなたの見立てはどうか?
元クリーブランド連邦準備銀行総裁。フィラデルフィア連邦準備銀行のエコノミストなどを経て、1987~91年クリーブランド連銀総裁。当時より熱烈なゼロインフレ(物価安定至上主義)論者として知られる。現在はシンクタンク、パシフィック・リサーチ・インスティテュートに在籍。
私も同じ気持ちだ。米国経済の見通しは、確かに、極めて不確実である。
細かい理由は後述するが、今年議会を通過した医療保険改革法と金融規制改革法の二つが経済の先行きの不確実性をいっそう高める要因となっているように思える。
そもそも、これらの改革は国民全体に多大なる影響を与えるものであるにも関わらず、規制の詳細はいまだ詰め切れていない。したがって、当面の影響が予測し難い。問題はこの見通しの悪さだ。それがビジネス界の不安を煽り、雇用や投資の意欲を削いでいるのだ。
当然、この不確実さは、ビジネス界だけでなく、消費者にも共有されている。ディレバレッジ(負債圧縮)のプレッシャーに晒された消費者が自分たちの負債レベルを注意深くモニターしているときに、この不確実さはいただけない。不確実は、成長の反義語なのだ。
―米国経済が景気の二番底(double-dip recession)に陥る可能性は?
いや、不確実とはいえ、そこまでの可能性は低いだろう。ガイトナー米財務長官は景気の二番底は予想していないと強調しているが、私も基本的には同意見だ。そもそも「異例なほど不確実」と発言したバーナンキ議長も、二番底に陥るシナリオを予測したわけではない。当面、かなり緩やかな成長にとどまる可能性があると言いたかっただけだろう。米国の多くの経済学者の見方も、そうだ。私自身も、米国経済が二番底に陥る可能性は20%程度しかないと見ている。