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モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

三菱自動車の不正が日産との軽自動車同盟に落とす影

佃 義夫 [佃モビリティ総研代表]
【第28回】 2016年4月22日
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燃費不正に揺れる三菱自動車。日産との合弁でスタートした同社の軽自動車事業の課題を振り返る。写真は2013年5月20日、水島でのラインオフ式での三菱・益子社長と日産の志賀COO(いずれも当時) Photo by Toshiyuki Fukuda

またもやこんな事態に――。
蘇る「リコール隠し」の記憶

 こんな光景はもう見たくなかった――。筆者が記者会見で見た三菱自動車のトップの姿は、2000年時に同社のトップが苦悩の色を浮かべて深々と陳謝する姿と二重写しに見えた。当時、リコール隠し事件で社長の逮捕にまで至り、長い再建の道のりを経て真の再生に向かう矢先に再び発覚した三菱自動車の不祥事。それだけに、長く三菱自動車をウオッチしてきた筆者としても、残念な思いが強い。

 三菱自動車工業(以下「三菱自」)の相川哲郎社長は20日夕方、国土交通省で記者会見し、「軽自動車の燃費試験時に燃費をより良く見せるためにデータを改ざんする不正が行われていた」ことを認め、「お客様はじめ全てのステークホルダーの皆様に深くお詫び申し上げます」と陳謝した。

 三菱自が発表したのは、同社が製造する軽自動車の型式認証取得において、国交省へ提出した燃費試験データについて、不正な操作が行われていたことだ。該当するのは、同社が2013年6月から生産している軽自動車「eKワゴン」「eKスペース」と、日産自動車(以下「日産」)向けに供給している「デイズ」「デイズクルーズ」の4車種。三菱自はこれまでに「eKワゴン」「eKスペース」を15万7000台、「デイズ」「デイズクルーズ」を46万8000台販売しており、これらを合計した62万5000台(2016年3月末現在)で不正なデータ改ざんが行われたことになる。

 三菱自によると、「具体的にはタイヤの抵抗や空気抵抗の数値を意図的に操作し、実際より燃費が良くなるように見せかけ、届け出をしていた。軽自動車の開発で提携する日産が次期車の開発にあたり、該当車の燃費を参考に測定したところ、数値に開きがあったため三菱自に確認を求めた。これを受けた社内調査の結果、不正が発覚した」という経緯がある。

 今回の問題発覚の背景にあるポイントは、燃費不正の該当車が三菱自と日産の開発合弁提携によって2013年に市場投入された軽自動車であること、環境問題の高まりの中で軽自動車の燃費競争が熾烈になっていることなどだ。

 いずれにしても、今回の三菱自による軽自動車の燃費不正発覚は、2000年時、2004年時のリコール隠し事件をようやく乗り越えたかに見えてきた同社の経営に冷や水をかけるものとなった。その影響について相川社長も「我々としても手が付けられない状況。国内でどのくらい影響が出るか見通せない」としている。

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佃 義夫[佃モビリティ総研代表]

つくだ・よしお/1970年、創刊86周年(2014年2月時点)の歴史を持つ自動車産業日刊専門紙『日刊自動車新聞社』入社、編集局に配属。自動車販売(新車・中古車)・整備担当を皮切りに、部品・物流分野を広域において担当した後、国土交通省・経済産業省など管轄官庁記者クラブ、経団連記者クラブ(自工会分室)と、自動車産業を総合的に網羅し、専任担当記者としてのキャリアを積む。その後、該当編集局内における各分野のデスク・論説担当編集局次長を経て、出版局長として自動車産業オピニオン誌『Mobi21』を創刊。以降、取締役編集局長・常務・専務・代表取締役社長を歴任。45年間の社歴全域で編集・出版全体を担当、同社の「主筆」も務める。日刊自動車新聞社を退任後、2014年に「佃モビリティ総研」を立ち上げ、同総研代表となる。


モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

「自動車」から「モビリティ」の時代へ――。クルマ業界が変貌を遂げつつあるなか、しのぎを削る自動車各社。足もとで好調を続けるクルマ業界の将来性と課題とは、何だろうか。日本の自動車産業・クルマ社会をウオッチしてきた佃義夫が、これまでの経験を踏まえ、業界の今後の方向・日本のクルマ社会の行方・文化のありかたなどについて、幅広く掘り下げ提言していく。

「モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫」

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