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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第32回】 2016年6月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

「株式ジェットコースター」を安全に愉しむには?

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ノーベル賞を受賞した現代ポートフォリオ理論によれば、すべての株式の組み合わせから構成される「マーケット・ポートフォリオ」に勝る投資対象は存在しない。だとすると、もはや個別銘柄には何の意味もないということになるのだろうか? 早くも4刷が決定した『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

個別銘柄に意味はあるか?――CAPM理論

ノーベル賞を受賞したポートフォリオ理論によれば、すべての株式をその時価総額比率に応じてまんべんなく組み入れたマーケット・ポートフォリオこそが、リスク・リターン平面上の王者である。

だとすると、僕たちにはもうわざわざ個別銘柄を取引する理由はないということになるのだろうか?

個別株式のリスク・リターンは効率的フロンティアの下側に位置する。決してマーケット・ポートフォリオには敵わないのだ。

しかし、逆に考えてみたらどうだろうか?

どんな個別株式も、すべてマーケット・ポートフォリオの一員である。それぞれの株式があるからこそ、このポートフォリオのリスク・リターンは最も優れたものになり得ているのだ。

それゆえ、個別株式のリターンを見積もるうえでは、その値動きの激しさ(リスク)に注目するだけでは不十分だ。そうではなく、マーケット・ポートフォリオに対してどんな動き方をしているのか、市場全体の動きの中でどんなリスクを持つのかにも注目すれば、個別銘柄のリターンについても意味を見出すことができる――。

そんな画期的なアイデアを提唱したのが、アメリカの経済学者ウィリアム・シャープ(William Sharpe: 1934~)だ。彼はマーコウィッツの現代ポートフォリオ理論を継承し、個別株式の期待リターンを計算するための、圧倒的にシンプルなモデルを編み出した。

それがCAPM資本資産価格モデル: Capital Asset Pricing Model)である。彼はこれを含めたさまざまな業績により、1990年にノーベル経済学賞を受賞している。

今回は、このアイデアについて見ていくことにしよう。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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