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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第28回】 2016年6月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

「損したくない人」のためのノーベル賞の投資理論

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「リターンを変えずにリスクだけを小さくする道」は存在する――にわかには信じがたいが、これがファイナンス理論の結論だった。一体どういうことなのだろうか? 話題のファイナンス理論入門書『あれか、これか』のなかから紹介していこう。

タマゴを1つのカゴに盛らない理由――分散効果

 「すべてのタマゴを1つのカゴに盛るな」という格言を聞いたことはあるだろうか? これが本当に正しいのかを見てみるため、ルーレットゲームの例を見てみよう。

50%の確率で赤か黒が出るルーレットのゲームで、プレイ料金は1回40万円。ルーレットAは、当たれば100万円だが、はずれたら賞金は0円だ。参加料に対する期待リターンは25%なので、非常に割のいいゲームだ(経済合理性を追求しているカジノでは、こんなギャンブルは実際にはあり得ない)。

とはいえ、50%の確率で40万円を失ってしまうという意味では、やはりハイリスクであることは間違いない。リスク(標準偏差)を計算すると、125%である。

そこであなたは次のような提案をしたとしよう。

 「当たったときの賞金は半額の50万円でいい。その代わり、プレイ料金を半額の20万円にしてもらえれば、2回プレイしましょう」

至ってフェアな申し出ではないだろうか。カジノのディーラーも快く受けてくれるだろう。しかし、この取引により、あなたはリターンを変えずにリスクだけを格段に小さくすることができるのだ。

2回連続で当たって100万円を手に入れる確率と、2回連続ではずれて賭け金すべてを失う確率は、それぞれ25%だ。一方、1回だけ当たって50万円を手にする確率は50%になる。

これに基づいてリスクとリターンを計算すると、期待リターンは25%のままだが、リスクだけは88.4%に下がる(計算は省略)。ルーレットAのもともとのリスクは125%だから、大幅なリスク減である。

では、1回のプレイ料金を10万円、賞金を25万円にしてもらい、ゲームの回数を4回に増やすと何が起こるだろうか? そう、期待リターンは25%のまま変わらないが、リスクは62.5%まで下がるのである。

ここからわかるとおり、自分の持ち金を小さく分散させてなるべく多くのゲームに賭けたほうが、期待リターンは25%の状態をキープしつつ、リスクを極限まで減らすことができる。

もしこのようなルーレットゲームが存在すれば、あなたは全財産を細かく分散投資することで、間違いなく財産を1.25倍にしてカジノを後にできるというわけだ。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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