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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第38回】 2016年7月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

堅実なメーカーとバイオベンチャー、社長になるならどっち?

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オプション取引の本質を突き詰めていくと、その原資産となる商品それ自体は、ハイリスクであればあるほど、オプションの価値は高いということになる。この一見直感に反する結論はどこから導かれるのか。ファイナンス理論の入門書『あれか、これか』のなかから紹介していこう。

オプションにも値段がある

宝くじと生命保険は、将来に一定の価格で資産を売買する権利を取引するという意味でオプション取引だ。

ただし、両者には違いもある。宝くじとは、「賞金を0円で手にする(買う)権利」を取引する300円のコール・オプションであるが、生命保険は「被保険者が死亡したときなどに原資産(被保険者の年収)を一定額(保険金)で売却する権利」を取引するプット・オプションである。

共通しているのは、将来に原資産を「決まった価格」で売買する権利を、お金を出して購入しているということだ。

ストック・オプションやレストラン予約のように、オプションそのものが無料であるケースは、あまり多いとは言えない。マイホームであれば手付金500万円、宝くじであれば1枚300円、生命保険であれば毎月の保険料というように、一定の「プレミアム」を支払うことで、オプションを購入しているのである。そう、オプションそのものにも値段があるのだ。

では、オプションの価値はどのように決まるのだろうか?それを明らかにしたのが、アメリカの2人の経済学者、フィッシャー・ブラックマイロン・ショールズが導き出したブラック・ショールズ式だ。

オプションの価格評価モデルを示したこの式は、1973年に2人の共著論文で『ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミー』に発表された。1997年にショールズは、これに対する厳密な証明を与えたロバート・マートンとともに、ノーベル経済学賞を受賞することになった。なお、すでに他界していたブラックは、残念ながらその栄誉に与ることはできなかった。

その後、ショールズやマートンも参加したヘッジファンドのLTCM(Long-Term Capital Management)が大きな損失を出して破綻したことなどから、ブラック・ショールズ式の妥当性に疑問が集まったことをご存知の人もいるかもしれない。

しかし、この考え方が依然としてオプション価格評価モデルの代表選手であることに変わりはない。モデルの信憑性と運用成績の結果は必ずしも比例しない。投資判断をしているのはモデルではなく人間だからだ。

そこでここからは、オプション価格の決まり方について見ていくことにしよう。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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