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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第40回】 2016年7月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

こんな人は生命保険に入らなくてもいい?
「不確実性の売買」としてのオプション取引

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オプション理論が重要なのは、空売りやデルタヘッジといった金融市場での取引に有効だからだけではない。これは生命保険や損害保険のような「不確実性に賭ける投資」の価値を判断する上で、重要な示唆を与えてくれる。ファイナンス理論の入門書『あれか、これか』のなかから紹介していこう。

空売りを使って「無風状態」をつくる

前々回および前回に見たとおり、オプションの価値は期待リターンの大きさではなく、リスクの大きさ(ボラティリティ)で決まる。ここが株式の現物取引とオプション取引との決定的な違いである。

これについて、具体例とともに見ていくことにしよう。

株式Sと株式Tがある。2つともいまの株価は100円だ。そして両方とも1年後には150円になっているか50円になっているかどちらかしかないとしよう。

株式Sは上がるか下がるかの確率が50%ずつなのに対し、株式Tのほうは150円に上がる確率が80%、50円に下がる確率が20%となっている。

1年後の株価の期待値は、株式Sは100円に対し、株式Tは130円(=150円×80%+50円×20%)となる。明らかに株式Tのほうが魅力的だ。

ハイリスク・ハイリターンの法則に従えば、リスクがあるのに期待利益が0円(=1年後の期待値100円-現時点の株価100円)の株式Sを選ぶ人はいない。

ここまではいわば常識の領域である。問題はオプションだ。

【問題】株式S・Tを1年後に100円で買えるコール・オプションが売買されている。
このとき、どちらのオプションの価値が高いか?

直感的にはやはり株式Tのオプション料のほうが価値が高そうだ。しかし、ファイナンス理論では、そうはならない。SとTのオプション価値は同じである。オプション価格は、期待リターンの大きさではなく、リスクの大きさで決まるからだ。

次のページ>> 証明してみよう
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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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