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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

「母子留学」の落とし穴、仲介業者に踊らされるな

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第48回】 2016年4月27日
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ここ数年で人気が急上昇した
マレーシアでの「母子留学」

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 筆者がマレーシアに住んで3年近くになるが、来た当時から比べて、最も驚くことのひとつが、いわゆる「母子留学」の増加だ。

質の悪いエージェントに騙される日本人も多いマレーシアでの「母子留学」。そもそもグローバル人材になるには、英語ができるだけではダメだ。親の側にも発想の転換が求められる

 母子留学とは、子どもに「国際的なグローバル教育」を受けさせるために、母親と子どもが海外に住み、現地の学校に子どもを通わせ、父親は日本に残るというスタイルの留学である。

 筆者がマレーシアに来たころ、ちょうど母子留学先としてマレーシアが注目され始めた。理由は、欧米留学に比べ、学費や滞在費が安く、治安も気を付ければまあ大丈夫、さらに日本からそう遠くなく、親日的な文化や日本人も馴染める食事など、比較的生活しやすい条件がそろっている、といったことが挙げられるが、最も重要なのは「英語教育を行うインターナショナルスクールが充実している」ことである。

 マレーシアの初等教育、特にインターナショナルスクールには、インターナショナルバカロレアプログラム(IB)など、欧米のプログラムを導入している学校が多い。筆者の娘もIBプログラム学校の1つに通わせているが、少なくともその学校の教育方針には賛同できることが多いし、先生の質も総じて良い。

 授業を英語で行うのはもちろん、中国語やマレー語の授業もある。生徒たちはマレー系、中華系、インド系マレー人に、さまざまな国の留学生も混じり、まさにインターナショナルだ。

 そして筆者が良いと思うのは、日本にはない評価基準である。例えば、体育の評価項目は、日本の初等教育にある「適切に運動ができる」「身体能力の程度」「団体行動ができる」といったものだけではなく、「できない子を励ましてあげているか」「リーダシップを発揮してグループを率いているか」など、「他者との関わり」を含めた総合的な評価をする。つまり、個性を持つことを推奨する教育と、チームワークを重視する教育の両方を同時に行っているところである。

 さらに与えられた問題を解く能力だけではなく、問題を発見する能力もつけさせるような教育をしている。詳しくは以前このコラムに書いたので、ご参照いただきたい(記事はこちら)。

 筆者がこの学校に娘を通わせると決めるまでには、それなりの時間が必要だった。家族でマレーシアに引っ越した時点では、娘はまだ幼稚園の歳だったため、近隣の幼稚園に入れ、そこで半年間、マレーシアの文化や学校生活に慣れさせた。その間に、インターナショナルスクールの情報をウェブや地元で知り合った友人、また幼稚園の校長先生などに尋ね、学校の絞り込みを行なった。3、4校まで絞ったのち、それぞれの学校を実際に訪ねて、受け入れ担当者および校長先生から話を聞き、さらに娘本人を連れていって、雰囲気が好きかどうか尋ねた。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

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