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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

患者に優しい日本で医療革新が起きにくい残念な理由

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
【第42回】 2016年4月29日
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日本では米国と比べ、薬剤の開発、商業化、事業化で成功事例が少なくなる。患者に優しい日本で医療革新が起きにくい理由とは

 こんにちは。鈴木寛です。

 3月にアメリカ西海岸を訪問しました。テーマは教育と医療。そこで今回は、医療イノベーションをテーマにしたいと思います。

 訪問先はカリフォルニア州のサンディエゴやサンフランシスコです。いずれも西海岸を代表する都市で、世界最先端の情報通信関連企業、バイオ関連企業、製薬・医療関連企業などが集まっています。シリコンバレーについては説明の必要もないと思いますが、サンディエゴはボストンに次いで全米で2番目となるライフサイエンス産業の世界的な集積地となっています。

 特にサンディエゴの特徴は、UCSD(カリフォルニア州立大学サンディエゴ校)の敷地に接して、NPO立の世界的な研究所が立ち並び、さらに大学周辺やソレントバレーと呼ばれる大変コンパクトなエリアに、バイオ系のベンチャー、世界トップの製薬・医療機器メーカーが集積しています。シリコンバレーは、サンフランシスコからサンノゼまで長い距離があるのに対して、サンディエゴのバイオクラスターは本当にコンパクトなので、主要な関係者との面会が自動車でほぼ10分以内の範囲で完結できるのが特徴です。

 また、カリフォルニアには10校の州立大学があり、どれも全米トップレベルで、多数のノーベル賞受賞者を輩出しています。たとえば、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進教授は、サンディエゴのソーク研究所で研究をされ、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授も、2012年から州立サンフランシスコ校で研究をされています。

 サンディエゴでは、医療イノベーションとエコシステムについて現地関係者と意見交換をし、東大・慶應の学生も連れてUCサンディエゴの教員と共に医療イノベーションについてのセミナーを行いました。また、UCSDと京都大学医学部による医療シンポジウムに来賓として参加し、サンディエゴ校と千葉大学による免疫に関する共同ラボ設立の協定調印にも立ち会いました。

日本を圧倒する
米国のバイオビジネスへの投資額

 医療について海外の先端研究の現場を見て思うのは、日本の研究者も世界的に負けていない分野がまだあるということです。京都大学、千葉大学をはじめ、交流や連携ができているのはその確かな証と言えるでしょう。

 しかし日本では、その研究成果から薬剤の開発、商業化、事業化の段階になると、成功事例が少なくなってしまいます。その差がどこにあるのかというと、まずはバイオベンチャーの数や投資家の数、投資額の違いがあります。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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