ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸の政策ウォッチ

JALへの支援は過剰?国交省はなぜ検証を怠るのか

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第33回】 2016年5月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 主要企業の16年3月期決算が連日発表されていますが、連休前に航空大手2社、ANAとJALの好決算が発表されたことをご記憶の方も多いと思います。では、そのときの報道の幾つかが、「来年3月末に“8.10ペーパー”が失効した後は航空産業の競争環境もだいぶ変わり得る」と書いていたことをご記憶の方はいらっしゃるでしょうか。この部分は政策の観点から重要なインプリケーションを含んでいるので、今回はこの点について解説したいと思います。

“8.10ペーパー”の経緯

JALの新規投資などを禁じる“8.10ペーパー”は2016年度末に失効する予定だ Photo by Ryosuke Shimizu

 この“8.10ペーパー”とは、JALの新規投資を2016年度末まで禁じるものであり、国交省内に設置された検討会での議論を踏まえてまとめられました。

 なぜそのようなペーパーが作られたかを簡単におさらいすると、2010年にJALが経営破綻したとき、当時の民主党政権はJALの再生に向けて過剰な支援を行なってしまいました。官民ファンドの企業再生支援機構から3500億円もの出資に加え、政府の事実上のバックアップがあったからこそ、金融機関などから5215億円もの債務放棄を勝ち得ています。また、既存の制度を使っただけとはいえ、税制優遇措置により2010~18年で合計4000億円以上の法人税減免措置も受けているのですから、これでは過剰支援と言わざるを得ません。

 この政府による過剰支援の結果として、JALはピカピカの財務体質の会社となって蘇りました。売上高こそANA(16年3月期で1兆7900億円)がJAL(同期で1兆3300億円)を上回っているものの、当期利益はJALがANAの2.2倍で1000億円もの差があり、営業利益率もJALがANAの約2倍、有利子負債の額はJALがANAの約9分の1となっています。

 しかし、大手2社による複占状況の航空産業で、このように片方が政府の過剰な支援を受ける一方で、もう片方は政府から何の支援も受けず自力で頑張っているようでは、航空産業内での公正な競争はとても確保できません。

 そこで、国交省は省内に設置した研究会での議論を経て、2012年に8.10ペーパー(「日本航空への企業再生への対応について」)を取りまとめ、そこで2012~16年度におけるJALの新規投資や新規路線開設を抑制する方針を打ち出しました。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸の政策ウォッチ

小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

「岸博幸の政策ウォッチ」

⇒バックナンバー一覧