来る8月30日と31日の両日、言論NPOと中国日報社および北京大学の共催で「東京-北京フォーラム」が開催されます。

 同フォーラムは2005年夏、あの反日デモ直後の北京で、日本のNPO法人である言論NPO、中国の4大メディアの一つで英字紙チャイナデイリーを発行する中国日報社及び北京大学と共同で立ち上げたものです。その後、この民間対話は北京と東京で毎年交互に行われ、日本と中国のハイレベルな有識者が本音で本気の議論を行う「公共外交」の舞台と位置づけられるまで、発展を遂げています。

 このフォーラムの目的は、日中両国間の課題に正面から向かい合い、真剣に議論を行うことで、その解決だけでなく日中両国民の相互理解を深めることにより新たな展開を創り出すること、さらに日中間の問題だけではなく、アジアの将来についても、自由に本音レベルで語り合う、民間の新しい議論の場を提供することです。

 私たちは中国側と表面的な友好や対話ではなく、いわば仲が良いから喧嘩ができるというような強固な関係を民間側に構築したいと考えたのです。

 そして今回、第6回目の対話が東京で行われます。「東京-北京フォーラム」は、10年間継続して行うことで日中双方が合意しており、6回目となる今回はその折り返し点で、第2ステージの始まりとなります。

 第1ステージの日中対話は、これまで両国関係や両国民の相互理解が主要なテーマとなりました。その後、政府間関係は改善されましたが、両国民の間には深刻な相互認識や基本理解のギャップがあり、国民感情の改善は大きく遅れています。一言でいえば、中国人は過去の鏡を通して今の日本を見ているのに対して、日本人は今の中国の現実から、これからの中国を見ています。

 このフォーラムに先立ち、言論NPOは日中の共同世論調査の結果を8月15日に公表しました。そこでもまた見られたのは、両国民間に横たわる「不信」の構造であり、未来に対する中国人の過度なまでの自信と日本人の不安でした。

 その中国も今や世界第2位の経済大国になろうとし、世界のパワーバランスは大きく変わり始めました。第2ステージの議論ではこうした現実を前に、日本と中国の国民レベルの相互理解だけではなく、両国が背負っている課題やアジアや世界の未来に関して、両国がどう貢献し責任を果たすのか、議論を通じて本音で向かい合わなければと考えています。

 今回の対話には、中国から現役の閣僚を含め、各分野を代表する専門家約60氏が出席し、訪日団は総数で110人を超えるほど大規模なものとなります。日本からも福田康夫元首相のほか、仙谷由人内閣官房長官、福山哲郎官房副長官、山口廣秀日銀副総裁などの政府系の要人、枝野幸男民主党幹事長、石破茂自民党政調会長など党幹部や、経済界や主要メディアの編集幹部を含め、日本を代表する有識者約60氏がこの民間対話の舞台に顔を揃えます。

 全体のテーマは「アジアの未来と日中の貢献」であり、「外交・安全保障」、「経済」、「政治」、「地方」、「メディア」の5つの対話で議論をぶつけあいます。

 今回の議論づくりのもう一つのポイントは「参加」です。全体会議と二つの分科会はインターネットで生中継されるほか、分科会では会場の参加者との間での議論も予定しています。そのため、参加するには事前登録が必要です。

 言論NPOは、「議論の力」でこの時代を動かせないか、と考えています。そのために真剣で質が問われる議論を、日本国内だけではなく、アジアにまで広げたいと考えています。そして、今や同フォーラムを通じて、巨大な中国との間で本当の議論が行われています。

 この国とアジア、そして世界の未来のために、このような民間の真剣な議論づくりが今、必要なのです。ぜひ皆さんもこのフォーラムに参加してください。

(認定NPO法人 言論NPO代表・工藤泰志)

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