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日本を元気にする経営学教室

学生割引、シニア割引、深夜タクシー料金……
価格差別を用いて販売収入を増やす
京都大学大学院経営管理研究部教授 成生 達彦

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第11回】 2010年8月23日
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 市場では「一物一価格の法則」が成立し、同じ物は同じ価格で取引される。というのは、空間(時間)的な価格差は、安い所で(時に)買って高い所で(時に)売るという裁定取引(投機)によって解消されるからである。

 しかしながら現実には、同じ物が異なる価格で取引されている。その理由にはさまざまなものがあるが、今回は「第3級の価格差別」について考えてみよう。ここで価格差別とは、買い手をいくつかのグループに分け、各々のグループに異なる価格を設定することによって利益を増やす方策である。

映画館の入場料にはなぜ
シニア割引や学生割引があるか

 実際、映画館の入場料には「シニア割引」や「学生割引」があり、一定の年齢以上の人や学生は安く映画を鑑賞することができる。これらは、長い間働いてきた老人や、若い学生たちへのサービスだろうか? そのような優しい企業は大歓迎ではあるが、資本主義経済では生き残れないだろう。それでは、なぜ値引きが行われるのか? 当然のことではあるが、映画館が利益を最大にするためである。

 いま、買い手にはいくつかのグループがあり、グループの間で価格に対する反応が異なるとすれば、すべてのグループに同じ価格を設定するのは必ずしも得策ではない。このような価格に対する反応は、需要の価格弾力性(価格が1%上昇すると需要が何%減少するかを表す)で測られる。お小遣い(可処分所得)がそれほど多くはない学生(老人)は、映画館の入場料が高くなれば、映画を見に行く回数を大きく減らすだろう(その意味で、需要は弾力的である)。その結果、彼らからの入場料収入が減少するのである。

逆に、一般の人々の需要は学生や老人と比べて非弾力であり、価格が多少高くなっても映画を見に行く回数はそれほど減らない。したがって、入場料収入を増やすために、入場料は老人や学生と比べて高く設定されるのである。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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