
トランプ関税ショックが吹き荒れる中、東京ガスが米国のシェールガス開発に巨額の投資を進めている。2023年12月に開発会社を4000億円で買収したのに続き、今春には米石油メジャーのシェブロンから800億円でテキサス州の権益を取得。米国のシェールガス関連で28年までに計7000億円超を投資する。取り扱うガスの量はLNG(液化天然ガス)換算で約1000万トンへ拡大し、現在東京ガスが日本に輸入するLNGに匹敵する規模になる見込み。米国への巨額投資に勝算はあるのか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、東京ガスが描くグローバルの天然ガス戦略の中身を探った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
東ガスが今春に米ガス権益を取得
25年3月期の利益の半分は海外事業
ガス最大手の東京ガスが米国へのシェールガス投資を加速させている。米国のシェールガス開発に乗り出したのは今から14年前の2011年。これまでに4回の減損を出すなど失敗もあったが、転機は17年のテキサス州ヒューストンにシェールガスの開発・生産を専門に手がけるTGナチュラル・リソーシズ(TGNR)の設立だ。同社を核に北米のシェールガス権益の取得に加え、ガスのバリューチェーンの拡大に向けた現地企業の買収や経営の現地化(ローカライゼーション)を進めてきた。23年12月には4000億円を投じ、米シェールガス開発会社のロッククリフ・エナジーを買収。この春には総額800億円を投じ石油メジャーのシェブロンから米テキサス州のシェールガス権益の70%を取得した。
東京ガスは中期経営計画で30年までにセグメント利益で2000億円の収益目標を掲げている。このうち海外のガス事業は500億円を計画していた。ただ、26年3月期の連結純利益計画は前期比81%増の1340億円、海外事業は約3倍となる671億円となる見込み。米国のガス市況の上昇が増益の主因だが、目標を前倒しで達成する見通しとなっている。
米トランプ大統領の関税強化で、日本企業はグローバル戦略の見直しを迫られている。だが、東京ガスのグローバル戦略は、トランプ関税を逆手に取って収益の拡大が見込めるしたたかなものだ。しかもガスの国際的なトレーディングにとどまらず、LNG受け入れターミナルやその先の発電事業まで視野に入れ、北米以外のエリアにも進出し始めている。次ページで、米国のシェールガスを起点とした東京ガスのグローバル・ガス・メジャー戦略を明らかにしていく。