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戦略コンサルティング・ファームの面接攻略法
【第12回】 2016年5月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
ビクター・チェン

「オフィスにクッキーを置くのは、不合理だ」
戦略コンサルタントなら、どう説得するか?

戦略コンサルティング会社の面接試験で、どのような点を重視するか? 『戦略コンサルティング・ファームの面接攻略法』で紹介されている、「オフィスにクッキーを置くのは、不合理だ」という主張を、戦略コンサルがどう説得するかというポイントから考えてみよう。

面接官は問題解決プロセスの安定性を見ている

 インタビュアーは志望者のどこを見ているのか。それを理解するために覚えておくべき重要な概念は、「高いプロセス能力」である。

 ケース・インタビューに当てはめれば、これは問題解決プロセスを“常に安定して”うまく踏めることを意味する。つまり、毎回同じように、物事をうまくこなせる能力だ。

 ケース・インタビューでは、(1)問題解決のために体系立った分析プロセスを踏める能力と、(2)そのプロセスを経て最終的に正しい結論にたどり着ける能力の2点が主な評価対象となる。この2つを比べると、(1)の能力のほうが重要である。

 インタビューの制限時間内に正しい結論を得ることよりも、常に安定して正しいプロセスを踏めることのほうが、はるかに重要なのだ。

 インタビュアーが高く評価するのは、正しい結論を得ても途中のプロセスが行き当たりばったりで不適切な志望者ではなく、結論は間違っていても途中のプロセスが適切な志望者である。前者に対しては、インタビュアーは単に運がよかっただけだと考える。

 戦略コンサルティング・ファームの面接は内定が決まるまでに何回も行われるので、たまたま運がよい人がケース・インタビューを1、2回通過することは起こりうるが、それが5回、8回ともなると、運だけで合格するのはきわめて難しくなる。

 適切な問題解決のプロセスを安定的に用いることさえできれば、あとは正しい結論へたどり着くまでにどれだけ時間がかかるかの問題だけになる。後に志望者の上司になるかもしれないインタビュアーは、たとえ面接の短い時間内では正しい結論を得られなかったにせよ、時間さえ与えれば正しい結論を導き出せると思える人材を望む。

 プロジェクト・マネジャーは、時間は多少かかっても安定して正しいプロセスを踏むコンサルタントは許容できるが、仕事は速くてもプロセスの質にムラがあるコンサルタントは許容できない。

 前者のタイプをより短時間で効率的に仕事がこなせるように指導するのは容易だが、後者のタイプをより安定的に質の高い仕事をするように改善するのは難しいからである。

コンサルタント、そして志望者が身につけるべき考え方

 私がマッキンゼーに在籍していたとき、社内が非常にあわただしい雰囲気になった時期があった。コンサルタントたちは次から次へとプロジェクトに追われ、息抜きをする時間も休暇も取れないと不平を漏らし始めた。パートナーの中には、コンサルタントの士気に大きな支障をきたしかねないと憂慮する人もいた。

 ある金曜日の昼、ニューヨーク支社長は社員を集めて、この問題について話し合うためのランチ・ミーティングを開いた。ミーティングに参加していた1人のコンサルタントが、支社長の命令でオフィスに置いてあるすべての菓子類をなくすことを提案した。

 オフィスには、深夜勤務で空腹になったときに無料で好きなだけ食べられるように、ポテトチップスや栄養バー、クッキーなどが山積みされていた。

 このコンサルタントは、自分の提案の妥当性を主張するために、2つの根拠を示した。1つは経済的なメリット、もう1つは社員の健康面でのメリットだった。彼が説明した綿密な分析は次のようなものだ。

 仮に、ニューヨーク支社に勤務する約1000人の社員が1日おきに各自1箱のクッキーを食べるとすれば、1人1日当たり100キロカロリーを余分に摂取していることになる(訳注:この計算では、クッキー1箱が200キロカロリーと仮定している)。これを年間の総カロリー数に換算してみよう

100キロカロリー×1000人×252(勤務日数)=
      2520万キロカロリー(余分摂取量)

 運動などによるカロリーの消費を考えなければ、ニューヨーク支社に勤務している社員の健康悪化は必至で、これは会社にとって医療費負担が増えることにつながる。その金額は10年間で200万ドルにのぼると試算された。これに加えて、菓子類の購入費用も支払う必要がある。

 支社長は、コンサルタントのきわめて真剣な提案に対して、ユーモアを交えて次のように返答した。「明らかに、この支社にいる全員が、どうしようもないほど忙しいわけではないようだね」(訳注:こんな計算をするくらいの余裕はあるという意味)。

 私がこの話を紹介したのは、戦略コンサルタントは、まさにこのような考え方をする人間であることを知ってもらうためだ。戦略コンサルタントは、自分が重要だと思うことはどんなものでも、推定したり分析したりせずにはいられない。

 ほとんどの人にとってはさして重要ではないと思われるテーマかもしれないが、このコンサルタントが示したプロセス自体は、戦略コンサルティング・ファームが高く評価するものである。彼の分析プロセスは線形的かつ論理的で、事実に基づいた合理的な推定が行われている。

 また、具体的な数字を使って期待される効果(影響)を示しており、何よりも重要な点は、他の人が彼の思考の道筋をたどれるような説明を行っていることだ。

 インタビュアーは、このコンサルタントのように、志望者が大局的な結論に至るまでの道筋をどのようにまとめ上げて、それをうまく言葉で伝えられるかを評価する。

 これは、なかなか習得しにくいスキルだ。これを行うためには、ビジネスの現場レベルで見られる事象の細かい分析をもとにして、クライアントのCEOなどが求めるような、高い次元での経営的な示唆を導き出すことが求められる。

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ビクター・チェン

元マッキンゼーのコンサルタント。スタンフォード大学を卒業後、8つの戦略コンサルティング・ファームの面接を経て、マッキンゼー、ベイン、モニター、L.E.K.、A.T.カーニー、オリバー・ワイマンの6社からオファーを受け、マッキンゼーに入社。トップ10パーセントに位置づけられる実績を上げ、最年少で昇進、トップ・コンサルタントとして活躍すると同時に、多くの入社希望者を面接するケース・インタビュアーを務めた。現在は独立してInc.500リストに掲載される企業のCEOのアドバイザーを務める一方、コンサルティング会社への入社を目指す人々を支援する会社を経営している。世界100カ国以上の戦略コンサルタント志願者が注目するウェブサイト(www.caseinterview.com)を運営している。
 


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