ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

ITとネットは困っている人を救えるのか~高齢化率33%、2030年の日本を映す白老町の試み

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第103回】 2010年8月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

ITとネットは世の中を便利にしかしていない

 ITとネットは世の中を便利にはしましたが、本当に困っている人を救えるのでしょうか。

 この点について、私はこれまですごく懐疑的でした。特に日本では、IT・ネット関連の機器やサービスは若い人の生活を便利にしてきただけだからです。極端に言えば、今や生活に不可欠になっているものの、最悪それがなくても人生困らない、人の生き死ににまでは影響ないものばかりです。

 その一方で、IT・ネットの普及は、世界中で文化やジャーナリズムという社会のインフラを衰退させるなど、まだ今の段階ではその負の側面ばかりが際立っています。

 たから私はIT・ネットについて否定的になってしまうのですが、もしかしたらその力で困っている人を救えるかもしれない、と思える大事な社会実験がスタートしました。私もその実験に深く関わっていますので、今週はそれを紹介したいと思います。

北海道白老町での独居老人の生活苦

 北海道の苫小牧のそばに白老町という自治体があります。新千歳空港から車で1時間くらい、人口2万人の小さな町です。洞爺湖サミットの夕食会でも供された白老牛の産地、そしてアイヌ文化で有名な場所でもあります。

 この白老町は深刻な問題を抱えています。それは高齢化の急速な進展です。高齢化率(65歳以上の高齢者が人口に占める比率)が33%と、日本の平均をはるかに上回っています。

 そして、この数字だけからは分からない、より深刻な問題が起きています。人口2万の約1割にあたる1750人もの人が独居老人、つまり一人暮らしの高齢者なのです。しかも、多くの独居老人の方々は不便な場所に住んでいます。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧