「エリートなら、やさしいエリートになりなさい」

ムーギー 佐藤さんは、昔から自分の意見をハッキリ持つタイプだったんですか?

佐藤 小学校では、挙手してまで意見を言うタイプではなかったかな。でも、家では新聞を読んでは「この事件はこうだよね」と一丁前に意見を言っていましたね。すると両親は、「そうだね、そういう考えもあるね」と返してくれる。そのうえで、「お父さんはこういうふうに思う」と付け足してくれるんです。なんでも受け入れて聞いてくれるから、両親にはなんでも話していました。

ムーギー 親がその態度だと、意見を言うことを臆さなくなりますよね。アンケートにも、親にしてもらってよかったことに「頭ごなしに否定されなかった」という回答があります。ご両親の態度は、お子さんたちの教育にも活かされましたか?

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佐藤 そうですね。「同じ家で暮らしていても、みんなそれぞれ立場が違う。意見が違っても頭ごなしに否定するな」と伝えていました。「そうだね。でも僕はこう思う」と言いなさい、人の意見をいきなり否定して反論するような偉そうなマネはするなって。

ムーギー 仕事でも、いろいろな人と利害調整をしたり、リーダーとして部下とコミュニケーションを取るときには、いったん相手の意見を受け入れる姿勢が求められます。自分の意見と違っても頭ごなしに否定せず、多様な価値観を認める。これは非常に大事なポイントですね。

佐藤 周りの人を幸せにしてこそ、幸せな人生ですからね。優れた技術を持った医者になっても、人間関係がおろそかであればいい医者にはなれません。息子たちにも、「人になにかをして、喜んでいただくことが本当の幸せ。小銭を稼いで立派な家を建てても、それは幸せとは呼べないんだよ」と言っていて。

ムーギー 相手のために自分を活かしなさい、と。

佐藤 ええ。「あなたたちは、よく勉強したと思う。でも、それはたまたま戦争のない平和な国に生まれて、勉強したいときにできる環境にいるからこそ。努力できる状態にあることを感謝して、エリートになるならやさしいエリートになりなさい」。このメッセージは忘れないでほしいですね。

ムーギー うーん、「受験マシーンの恐ろしいスパルタママ」って印象、もう完璧に払拭されました(笑)。