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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

被害110億円!大泥棒、銀行間ネット“スイフト”上に現る

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第37回】 2016年6月8日
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 筆者の長年の友人であるフィナンシャルタイムズ米国版の編集長ジリアン・テッドが、珍しく「決済インフラ」の記事を編集長自ら書いた。これはそれだけ重要な問題であるからだ。

 今年2月、バングラデシュ中央銀行がハッキングされ、国際金融ネットワーク「スイフト(SWIFT)」のアクセスコードなどの情報が盗まれた。犯人はバングラデシュ中銀になりすまし、アメリカの中央銀行FRB(Federal Reserve Bank)に保有するバングラデシュ中銀の口座から1億100万ドル(約110億円)を強奪。実はこれ、「史上最大級の銀行泥棒」である。

 国際業務を行うほとんどの銀行はスイフトを使用しているだけに、この事件は世界中の銀行に衝撃を与えた。同じやり方で他の銀行が狙われる可能性が高いからだ。これは由々しき事態である。スイフトは最大で10件、同様の侵入事件に遭っていると報道されている。

 銀行泥棒といえば、映画にもなったボニー&クライドやジョン・デリンジャーなどの強盗犯が有名だ。それとの違いは、今回は“顔の見えない犯行”で、ネット化し顔が見えなくなっている現代社会を象徴した犯罪ともいえる。

巨額窃盗事件の舞台となった
「スイフト」とは何か

 スイフトとは、決済インフラで金融機関専用のネットワークのことだ。ある意味、裏方のインフラであり、ほとんどの読者はご存じないのではないか。SWIFTとは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略称で、以前は「国際銀行間通信協会」と呼んでいた、1973年にベルギーで設立された共同組合(Société Coopérativ)である。その後77年に稼働を開始した。

 1960年後半からユーロダラー市場が拡大し、73年から国際通貨制度に変動相場制が導入されるなど、国際金融取引が拡大した。そのためテレックス(TELEX)やマニュアル(人手)の事務処理が限界、つまり紙による事務処理の限界(ペーパークライシス)に達した。その様な状況に対応するため、スイフトが設立された。

 そもそもはテレックスを高度化したE-Mailの様なもので、自動化を目的としている。そのイメージは、エクセルの様なマス目状。金融機関名や金額などを決められたマスに入れていくため、自動処理しやすくなっている。また、人手による間違いも防止しようという目的もある。

 導入している国は200としており、世界中をカバーしている。参加機関は1万を超え、日本では250もの主たる銀行や金融機関が使用している。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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