一昨年、すき家で人員不足問題が勃発したゼンショーホールディングス。深夜営業の再開には一定のめどが付き、業績は回復基調だ。2018年度にROE10%超えを目指すが、海外での苦戦など課題も抱える。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

「イラッシャイマセー」。東京都内各所の牛丼チェーン「すき家」の店内では、片言の日本語が飛び交うのが日常となっている。

 この1年半の間に、すき家の外国人スタッフ比率が上昇した。2014年10月時点で約11%だったものが、16年3月には約16%。14年2月に人員不足が騒動となり、その後の人材確保で外国人の採用が増えたのである。

 騒動当時、すき家では人件費削減を目的にアルバイト1人で店舗業務を行う「ワンオペレーション」(ワンオペ)を実施しており、労働環境の厳しさが指摘されていた。そんな中で、14年2月に作業負担の大きい「牛すき鍋定食」を発売。激務に耐えかねた多くのアルバイトが職場を去った。

 この“鍋の乱”を受けて、すき家は、14年10月にワンオペの廃止を決断。全1981店舗のうち、1254店で深夜営業の一時休止を余儀なくされた。

 あれから1年半を経た16年3月、人手不足を外国人スタッフで補い、深夜閉店数を232店にまで減らした。「留学生などの外国人が多い首都圏では、アルバイトの採用が進んだ」と大原一則・ゼンショーホールディングスグループ財務部ゼネラルマネジャー。都内と神奈川県では、既に全店が深夜営業の再開にこぎ着けている。

 深夜営業の再開に伴い、業績は回復基調に乗っている。15年度を見ると、売上高は前年度比2.7%増の5257億円にとどまるが、営業利益は同384.9%増の121億円と伸長した。

 14年度に売却した米国のレストラン子会社Catalina Restaurant Group(CRG社)の赤字が消滅したほか、すき家の深夜営業の再開が売上高で71億円、営業利益は27億円の押し上げ効果をもたらしたのが大きい(図(1))。

 もっとも、14年度決算における深夜休業の影響は、13年度に対し売上高で111億円、営業利益で59億円のマイナスインパクトで、15年度も騒動前の平常運転に戻るまでには至っていない。

 「16年度末には、深夜営業もほぼ全店再開し、平常運転に戻れる」(ゼンショー)と見込むが、アルバイトの雇用増や時給単価の上昇で人件費の増大は免れない。