長らくデジタル携帯音楽プレーヤー市場を席巻してきたアップルの「iPod」を抑えて、この8月、ソニーの「ウォークマン」が月間市場シェアで初めて首位に躍り出た。巷で言われているように、これはiPodの新製品が発売される前の「買い控え」によるものなのか、それとも、ソニーによる地道なブランディングの賜物か? 調べてみると、一過性の出来事とは言い切れない新たな市場の動きが見えてくる。日本の音楽(プレーヤー)シーンがにわかに面白くなってきた。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

なぜ今、ウォークマンが首位に?
関係者を驚かせた市場シェアの逆転劇

 デジタル携帯音楽プレーヤー戦線に“異変” が起きている。今年8月第1週(2010年8月2日~8日)における携帯音楽プレーヤーの国内販売シェアで、ソニーの「ウォークマン」が、アップルのiPod(アイポッド)を抜い抜き、首位に躍り出たのだ。

 ウォークマンが瞬間的にiPodを抜いたことは、過去にもあった。しかし、今回は今までと様子が違う。

 全国量販店のPOSデータを集計・調査するBCN(東京都千代田区)によると、8月第1週のシェアは、iPodの45.7%に対してウォークマンが46.7%と、ソニーがわずかに上回った程度だった。ところが、追い上げはそれだけで終わらなかった。

 第2週は、iPodの44.7%に対してウォークマンが48.1%とその差を広げ、ついにはソニーが8月月間で首位を獲得したのである。これは、2001年の調査開始以来、初めての現象だという。これにより、直近のシェアはソニーが47.8%、アップルが44.0%となった。

 両社は国内市場の“二強”と呼ばれており、2社合計で9割以上のシェアを持つ。とはいえ、実際はこれまでアップルが首位を独走してきた。携帯音楽プレーヤーの先駆けとなり、音楽産業の構造さえ様変わりさせてしまったiPodの人気は、やはりすさまじいものがある。