大阪高等裁判所で、賃貸住宅の更新料を無効とする判決が相次いでいる。表示ルールの改定や、更新料の減額や廃止──。最高裁判所での判決確定を前に、賃貸業界でも動きが目立ってきた。法律の規定もない、“慣習”に基づき続いてきた更新料。その変化の動きを追った。

 2010年10月、賃貸住宅の新たな賃料表示制度が始まる。不動産会社の店頭やインターネットでの物件募集広告や重要事項説明書などの記載項目として、従来の物件情報に加え「めやす賃料」が表示されるのだ。

 めやす賃料とは、1ヵ月当たりの実際の負担額。仮に同じ条件で4年間住んだ場合の費用(賃料、共益費、敷引金、礼金、更新料など)を合計し、1ヵ月当たりの額に割り戻したものである。

 賃貸住宅を取り扱う不動産会社1167社が加盟する最大の業界団体、日本賃貸住宅管理協会(日管協)が、全国の会員企業に導入を呼びかける。

 当然ながら、めやす賃料は従来の賃料より高く表示される。業界団体が、一見貸手側に不利に見えるこの表示制度の普及を進めるのは「借主と貸主の理解不足によってトラブルが多発している。今業界が動かなければ賃貸市場に対する信頼感が失われる」(三好修・日管協会長)との危機感からだ。

 トラブルのなかでも最大のものが更新料の無効訴訟である。

 更新料とは、賃貸借契約の更新時に家賃の1~2ヵ月分を払うもので、首都圏や京都などの一部地域で“慣習”として普及している。

 ところが、従来は受け入れられてきた更新料が「無効」とされる判決が最近相次いでいる。この5月までに、大阪高等裁判所で3件の無効判決と1件の有効判決が出た。判決のうち3件が上告中で、これらの最高裁判所の判決が今年度中にも出ると見られる。

最高裁判決を待たず
増える更新料なし物件

 一部地域にしか存在せず、法律の規定もない更新料。じつは、そのルーツは戦前にまでさかのぼる。

 当時、東京では人口が増加し、住宅不足に陥っていた。そこに物価統制令が出て、家賃の値上げを禁じられた大家が、契約を更新する際に、居住継続と引き換えにカネを借主に要求することが横行した。この“ヤミの権利金”が更新料の起源といわれる。いわば貸手優位の市場で生まれた慣習だ。