アベノミクスで果たして日本経済は良くなったのか Photo:首相官邸HP

 参議院選挙における大きな争点は、アベノミクスの評価だ。この問題については、本連載でもしばしば論じてきた。以下では、それらを総括する意味で、さまざまな経済指標について、安倍晋三内閣発足直後と現在とを比較してみよう。そして、それが意味するものについて論じることとする。

 要点は、実体的な経済活動が1.5%程度しか成長しなかったのに、投機で株価は6割程度上昇し、他方で実質賃金や実質消費がマイナス成長になったことだ。

ほとんど伸びていない実質GDP
消費も3年間で1.2%減少

 経済全体の動きを最も的確に表しているのは、実質GDPである。ところが、安倍内閣発足以降の実質GDPは、ほとんど伸びていない。

 図表1に示すように、実質GDPは、この3年間でわずか1.4%増加したにすぎない。安倍内閣のさまざまな経済政策においては、実質1.5%の経済成長が前提とされているのだが、実際には、3年間かかっても1.5%成長を実現できていないのだ。

 しかも、過去と比べても、成長率は低下している。リーマンショック後の年間成長率は、2010年は4.7%、12年は1.7%と、かなり高かった。

 一般には、それまで停滞していた経済活動が、アベノミクスによって活発になったように理解されている。そして、今回の参議院選において、自由民主党は、これがアベノミクスの大きな成果であるとしている。

 しかし、それは、次項で述べる株価の動向を見ての印象にすぎず、実質GDPに代表される実体経済は活性化していないのだ。

 とくに注目されるのは、実質消費が減少していることだ。図表1に見るように、実質家計最終消費支出は、この3年間で1.2%減少している。これについては、後で述べる。

◆図表1:経済指標の変化(2013年初めと16年初めの比較)

円安効果が生んだ
企業利益と株価の上昇

 実体経済が停滞しているにもかかわらず、株価の上昇は極めて著しい。日経平均株価は、2013年1月から16年1月までの間に、57.3%上昇した。

 この背景には、企業利益の増加がある。法人企業統計における全産業、全規模の営業利益は、図表1に示すように、13年1~3月期から16年1~3月期までの間に26.3%増えた。