9月10日、経営再建を進めていた日本振興銀行は、多額の債務超過のため、自主再建をあきらめて破綻申請をした。この申請を受けて金融庁は、同行の経営破綻を認定し、預金1千万円までの元本とその利息だけを保護する「ぺイオフ」を発動すると初めて発表した。
これまで政府は、その影響の大きさを考慮して、金融機関が破綻しても公的資金を注入するなどの方法によって、実質的に預金全額を保護してきた。ところが、今回実施されたペイオフでは、「保護されるのは1千万円までの預金元本とその利息」に限られる。
逆に言えば、それ以上の金額については、支払額が一部カットされるケースが発生する。つまり、預金金額の一部が預金者に戻らないことが考えられる。
初のペイオフ発動の背景にある
「影響が限定的」という理屈は本当か
今回のペイオフ発動の背景には、主に2つの理由がある。
1つは、日本振興銀行の破綻による影響が限定的と見られることだ。破綻によって、預金の払い戻しに影響が出る預金金額は約100億円と見られ、預金総額全体(約6000億円)の2%弱に留まると予想される。
また、同行は自前で銀行間決済の仕組みを持っておらず、今回の破綻がわが国の金融システム全体に与える影響は軽微と考えられる。さらに同行は、定期預金しか扱っていないため、企業の資金決済に支障が出る可能性も低い。
もう1つの理由は、同行の不良債権が多額に上るため、公的資金の注入に国民の理解が得られにくいことだ。同行の不良債権の増加については、前経営者である木村剛氏の経営方針が強く影響していると見られ、金融専門家の間でも「同氏の経営手法はかなり強引だった」との批判が出ている。
そうした状況下、政府が救済の手を差し伸べることについては、「国民の賛同が得られない」との読みがあったのだろう。とはいえ、今回のペイオフ発動は、国民の多くにとって本当に影響が少ないのだろうか?