この7月1日より、日本IBMやパナソニック、ソニーなどが参画する任意団体work with Prideは、LGBTなどの“性的マイノリティ”に対する企業の取り組み姿勢などを絶対評価で採点する「LGBT指標」への自由応募の受け付けを開始する。日本初の試みには注目が集まるが、課題もまた浮かび上がる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

LGBT対応で企業評価の試みは日本で受け入れられるか5月の「東京レインボープライド2016」では、約5000人のLGBT当事者と支援者が東京・渋谷の街を行進した。今年は、ルートが変更されたこともあり、スクランブル交差点を横断した Photo:JIJI

 “性的マイノリティ”に対する企業の取り組みを絶対評価する日本初の「LGBT指標」がついに動きだした。

 6月21日、その詳細が明らかになった。正式名称は、PRIDE指標で、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど)に対して、具体的に企業がどのような施策を行っているのかをインターネットで自己申告してもらう。ネットでの募集にしたのは、地方自治体からの参加も期待しているからだ。

 運営団体のwork with Pride(以下、wwP)は、5項目について評価する。(1)行動宣言、(2)当事者コミュニティ、(3)啓発活動、(4)人事制度・プログラム、(5)社会貢献・渉外活動の取り組みについて、それぞれ基準を満たしていれば1点、そうでなければ0点が付けられる。従業員が300人以上の大企業と同300人以下の中小企業に分けて実施する。

 PRIDE指標で満点となる5点を獲得すればゴールド企業、4点はシルバー企業、3点はブロンズ企業として認定する。認定を受けた企業は、経済産業省が女性活躍を推進する上場企業を選定した「なでしこ銘柄」のように、宣伝活動に使ったり、名刺に刷ったりして消費者にアピールできる。

 運営するwwPは、2012年に、LGBT問題に注力してきた日本IBMと、国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチが発足させた任意団体だ(後に、当事者が中心のNPOが二つ加わった)。

 自主的な応募が原則だが、欧米では、企業からの回答シートを基にNPOがランキング形式で順位を公表する手法が定着していた。

 事実上、企業側にLGBT問題に対する取り組みを促す“圧力”として機能しており、消費者向けのビジネスをする企業にとっては無視できない存在でもあった。

 例えば、米国の人権団体HRCの調査では、海外で活動する日系の大手自動車メーカーなどが高い評価を得てきた。それは、「順位が低いとビジネスに影響が出る」(自動車メーカーの関係者)からだ。

 だが、「将来は分かりませんが、ランキング形式は今の日本の実情に合わないと判断しました」と、wwPの事務局で取りまとめ役を務める川村安紗子氏は明かす。

 裏を返せば、日本ではそこまでの水準に達しておらず、ランキング形式にするだけの企業数が集まらない。また、勝手格付けにすれば、LGBT問題への取り組みが進む外資系企業ばかりになる。だから、当面は“全体の底上げ”を優先せざるを得ないのだ。