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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

あなたの会社はゲイがのびのび働ける環境か?

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第32回】 2015年9月2日
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ダイバーシティの中でも
性的志向はもっともセンシティブ

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 業務のグローバル化に伴うダイバーシティマネジメントの重要性が言われているが、日本で「ダイバーシティ」と言う場合、「女性登用」を連想されやすい。

 だが、当然ながら、ダイバーシティマネジメントの問題には、性別のみならず、人種、年齢、そして性的志向も含まれる。このうち、性別、人種、年齢は、外側からはっきりわかるため、問題の所在は明らかになりやすい。だが、性的志向については、かなりセンシティブな問題だ。

 日本でも最近LGBT(女性同性愛者〈レズビアン、Lesbian〉、男性同性愛者〈ゲイ、Gay〉、両性愛者〈バイセクシュアル、Bisexual〉、そして性同一性障害含む性別越境者など〈トランスジェンダー、Transgender〉の人々を指す頭字語)という言葉が使われるようになってきているが、たぶん実感としてピンとこない人々のほうが多いだろう。

 筆者の暮らしているマレーシアは、多民族、多宗教な上に、女性の社会進出については日本よりはるかに進んでいる。経済規模は日本が圧倒的に大きいものの、グローバルマネジメントの先進性については、マレーシアのほうが進んでいるといっていいだろう。だが、LGBTについてはマレーシアも遅れていると言わざるを得ない。ひとつ例を示したい。

 筆者の所属している大学は、本校がオーストラリアのメルボルンにあるオーストラリア資本の大学だ。したがって、基本的な雇用ポリシーもオーストラリアのものが採用されている。その中には明確に、「性的マイノリティを差別しない」という項目がある。

 そのため、あからさまにカミングアウトはしないものの、筆者の同僚には何人かのゲイやトランスセクシャルがいる。中には、ヨーロッパの大学から、マレーシア人の彼氏を追いかけて、こちらの大学に赴任した白人の同僚までいる。彼によると、彼らはヨーロッパの某国で同棲していたのだが、マレーシア人の恋人がリーマンショックによって働き口がなくなってしまい、マレーシアに戻ったのをきっかけに、彼もマレーシアの大学に転職したのだという。

 その同僚とマレーシア人の恋人とは、我が家と家族ぐるみの付き合いをしている。マレーシア人の恋人は建築関係の仕事に就いており、こちらではエリートだ。だがとても親しみやすく、また料理が抜群に上手だ。彼らのマンションに遊びにいくと、いつも彼のエスニック料理に舌鼓を打つ。

 あるとき、筆者は彼らと、他の同僚とともにクアラルンプール市内のあるレストランで親睦会を行った。他の同僚も含め、男ばかり6人の集まりだったが、彼らカップル以外は、筆者も含めストレートな性的志向の持ち主ばかりだった。

 食事が終わった後、彼らカップルは「俺らの車に乗れよ。飲みに行こう」と我々を誘った。マレー人の彼はイスラム教徒なので、酒は飲まない。マレーシアの酒場には、ノンアルコールドリンクも豊富にある。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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