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こじらせない離婚
【第6回】 2016年7月5日
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原口未緒 [弁護士]

子連れ離婚。専業主婦の「お金どうするか問題」の処方箋

離婚相談で一番多いのは、出産で一度職場を離れた専業主婦からの相談です。とくに、幼い子どもを抱えて離婚するときには、金銭面が気になります。

「養育費はいくらもらえる?」
「そもそも収入がないのに、本当に離婚して大丈夫?」

そんな疑問に、新刊『こじらせない離婚』で注目を集める離婚案件専門弁護士の原口未緒氏が答えます。

「自分」を主語に将来を考えないと
離婚は必ずドロ沼化してしまう

 「夫と離婚したい。でも、自分は収入がないし、まだ子どもも小さい。離婚できたとしても、果たしてちゃんと生活できるんだろうか……」

 離婚相談を受けていると、そう打ち明ける女性は少なくありません。

 私はいつも、そんな女性にまず「離婚後の人生をできるだけ具体的に思い描いてください」とアドバイスしています。

 どこに住んでいるのか、どんな場所で働いているのか、子どもはどこに通っているか、何時に寝て何時に起きる生活をしているのか……。そういった、将来の自分を思い描いてもらうのです。

 離婚の相談にいらっしゃる女性の多くは、離婚したい理由や、ご主人の嫌なところを一気に吐き出します。

 それはそれで必要なプロセスですが、一度ご主人への不満を吐き出したら、次は、主語を「自分」にすることを意識してみてください。「ご主人との過去」を考えるのではなく「自分の未来」を考えるのです。

「自分はこの先どうしたいのか」
「自分は子どもとどんな生活を送りたいと考えているのか」

 自分を主語にして将来のことを考えると、物理的にどこに住むべきか、そのためにはいくら必要か、何が妥協できて、何は譲れないかなど、ものごとの優先順位が決まってきます。

 これが、私の言う「心の整理」です。心の整理ができれば、たいていの離婚はうまくいきます。逆に、この「心の整理」ができていなければ、いくら法律知識があっても離婚はドロ沼化します

専業主婦。「お金どうするか問題」の処方箋

 出産で仕事をやめ、いまは専業主婦という人たちが、漠然と離婚を頭に思い描いたとき、まず直面するのがお金の問題です。

 若いうちに結婚して出産した人は、社会人経験が短いことが多く、社会復帰できるかどうかを、とても心配します。

 逆に、長年働いてキャリアを築いた後に出産された方の場合は、「40歳を超えてから働ける場所があるのだろうか」と、別の悩みを抱えています。

 このような方々には、まず、実際に生活に必要なお金と、母子家庭になったらもらえるお金を整理することをおすすめしています。

 まずは、支出から。
 お子さんと生活するのに必要な費用は把握できていますか?

 

何かとお金はかかるものだが……。

 家計簿をつけていなかったり、金銭管理をご主人にまかせきりだった人は、これを機に1ヵ月にいくらあれば生活できるかを算段しましょう。3ヵ月ほど家計簿をつければ、実際の支出がわかるはずです。

『こじらせない離婚』の48ページで紹介している、家賃、光熱費、食費、通信費、教育費、交際費、保険料、交通費、保育料などがすらすら出てくるようであれば問題ありません。

 家賃が一番大きなウエイトをしめるはずですので、実家を頼れないかどうか、母子家庭が優先的に入れる住宅がないかどうかも検討してください。

「離婚した後」にもらえるお金を整理する

 次に、離婚した場合にもらえるお金を洗い出しましょう。

 まず、財産分与と夫からもらう養育費があります。財産分与は、結婚してから夫婦で得た収入を二等分します。若い夫婦だとほとんど貯蓄がない場合も多いものです。いま、自分の家にいくらの貯蓄があるか、しっかり把握しましょう。預貯金だけではなく、保険や株も確認してください。

 養育費はご主人とあなたの収入に応じて計算式が決まっています。ネットでも養育費算定表が公開されていますので、計算してみてください。もちろん、ご主人さえ同意してくれれば、算定表以上の養育費をもらうこともできます。

 それ以外にも、児童扶養手当、児童手当、母子家庭のための住宅手当など、単親家庭を保護する手当はいろいろあります。(詳しくは『こじらせない離婚』の50ページ参照)。自治体によって条件が違うので、実際に役所に行って確認してみましょう。

 これらの手当に、自分の収入をプラスした金額が、1ヵ月の収入になります。

パートで10万円+手当で
当面の生活はじゅうぶんカバーできる

 よく「今まで働いてこなかったから」とか「何の資格も持っていないから」と、最初から「自分は稼げない」と思い込んでいる方を見かけますが、そういう人たちはほとんどの場合、仕事を贅沢に選びすぎです。

 「資格をとってからじゃないと働けない」とか「私の年齢で雇ってくれる会社なんてない」などと言う人は、実際に仕事先を探していないのにそう言っている人がほとんどなのです。

 まずはパートでもいいから働きに出ると決めてしまえば、月に10万円程度は稼げることが多いものです。その10万円に、先ほどの手当をのせていけば、お子さんと生活していくことも現実味が出てくると思います。

 私がおすすめするのは、離婚を切り出す前に、まず週に何回かでもいいので働いてみることです。それまで家庭にしかベクトルが向いていなかった人が、新しい環境に身を置くと、意外と心が安定することがあります。

 新しい友達ができたり仕事仲間ができて、その人たちとのコミュニケーションが楽しくなると、ご主人に向いていた不満が気にならなくなったり、場合によっては離婚しなくてよいかもと思う人もいるくらいです。

女性が働きに出ると
旦那のモラハラ防止につながる

 もうひとつ、女性が働きに出ることには、メリットがあります。モラハラの防止になりやすいのです。

 モラハラの典型が、「誰が食わせてやってると思っているんだ」といった言葉を投げつけられるケースですが、働いていれば、このようなモラハラ発言を受けることも少なくなります。

 実際に働きに出た人たちからは「自分がほしいものを自分で買えるというだけで、心にゆとりがある」といった言葉を聞くことが多いものです。

 子連れで離婚しようと思ったら、なんでもかんでも頭で考えるのをやめて、実際に手と身体を動かしましょう。ポイントを整理しておきます。

(1)手を動かして、1ヵ月の支出を調べる
(2)足を運んで得られる金額を確かめる
(3)身体を動かして、働きに出てみる


 これらをする人としない人では、離婚までのスムーズさが違ってきます。

 ポイントは「ご主人との過去」ではなく、「自分と子どもの将来」に焦点を合わせること。心の整理がうまくいき、優先順位がはっきりすれば、金銭面の話し合いも、離婚自体も、おのずとうまくいくものです。

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原口未緒(はらぐち・みお) [弁護士]

弁護士。1975年東京都生まれ。98年学習院大学法学部卒業、2003年弁護士登録。都内法律事務所にて民事、商事、家事、刑事、倒産処理など多様な案件を扱う。08年、北海道の法律事務所へ赴任。地域唯一の弁護士として主に債務整理案件を担当。

10年に独立し、未緒法律事務所を開所。夫婦・離婚案件を主に扱い、相談件数は350を超える。13年より業務にコーチング・カウンセリング・セラピーなどの手法を取り入れ、「心もケアする弁護士」として奮闘中。自身も離婚経験がある。本書が初の著書。

 


こじらせない離婚

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