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「引きこもり」するオトナたち

空き駐在所を引きこもり当事者らの“居場所”にした先駆的施策

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第262回】 2016年6月30日
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元駐在所を活用した「ピアハウスしょうわ」

 空き家や空き施設の有効活用する動きが広まる中で、山梨県昭和町は、元駐在所を引きこもり当事者らの「居場所」にリニューアルする、全国でも前例のない取り組みを始めた。

 同町にある住み込み式の一軒家が併設された元駐在所の空きスペースを活用して、今年4月に開設された「ピアハウスしょうわ」だ。

 この“居場所”を運営するのは、昨年12月に一般社団法人「やまなしピアカフェ」を設立した1人で、長年の「引きこもり」経験者でもある永嶋聡さん(46歳)。同町からは、委託とか契約とかいう従来のカタチではなく、「協働」パートナーとして運営を任された。

 「要綱やルールをつくらなければ、先に進めないとしたら、先の見えないものには取り組めないという思いが、担当者としてはあります」

 そう語るのは、担当する同町福祉課の伊藤直樹課長(52歳)。とくに、福祉の現場では、先の見えない課題がたくさんあるという。

 「形にならなければ動けないのであれば後手に回ってしまう。せめて、わからないなりにも、やりたい人たちの思いにかけてみたい。後押ししたいという思いが、ピアハウスしょうわという形になって表れたのです」

伊藤さんを突き動かす原動力になった
「人生最大の挫折」

 元々、伊藤課長は10年くらい前から、対話を通して答えを探すファシリテーションに興味を持ってきた。個人的にファシリテーションの勉強を始めたのも、かつての苦い経験があったからだ。

 平成大合併の時代、伊藤課長は近隣自治体との合併推進を担当する係長だった。しかし、町民の多くは合併に反対し、結局、単独で行く道を選んだ。

 人生最大の挫折感を味わった。自分が良かれと思って進めてきた合併案が、6~7割の住民に反対されたからだ。

 当時、町内をくまなく歩き回った。合併検討のための第三者委員会をつくり、事務局として進行役も務めた。

 「推進派と反対派で紛糾してしまって、僕は適切な舵取りができなかったんです。もし、あのとき、いろいろな考えに上手い切り換え方ができたとしたら、紛糾しないでもう少し建設的なやりとりができたのではないか?という思いが、ずっと心の中にありました。会議というのは、いろんな考え方が出る。結果はどうであれ、いい方向に導き出せる力を身につけたいと思い、ファシリテーションに興味を持ったのです」

 その苦い経験がなければ、話し合いを円滑に進めていこうとは思わなかったかもしれないという。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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