この秋、チキンのブランド認知ナンバーワンの座を目指し、日本マクドナルドが攻勢を強める。

 そもそも、ビーフが本業のマクドナルドがチキン市場に“本気”を見せたのは今年7月。「“チキンといえばマクドナルド”といわれる代表商品を作る」(マーケティング本部)というコンセプトのもと、「チキンバーガー ソルト&レモン」など、期間限定商品を含め、新たに3商品を一気に投入した。

 マクドナルドによると、ファストフードなどのカジュアル外食チェーンのチキン市場(焼き鳥屋などは除く)は3920億円。うち、マクドナルドの売り上げは約640億円で、売り上げベースのシェアは16.3%と、じつはすでにトップであるという。

 しかし、「残念なことに、私どものことをチキンブランドNo.1であると思ってらっしゃらない」(原田泳幸・日本マクドナルド社長)顧客もいるのが現状。ここに改善点があると見て、体制を強化したわけだ。

 新たなチキン商品の売り上げについては未公表だ。ただし、マクドナルドの7月、8月の既存店売上高はそれぞれ、前年同月比9.8%増、9.2%増。特に8月の月間全店売上高は創業以来最高の513億9200万円となり、今年3月に記録したこれまでの最高額、497億2800万円を塗り替えた。その要因のひとつが、「チキンの新商品の売り上げが好調で、新規顧客獲得に結びついた」(マクドナルド)ことだという。

 「チキンメニューのさらなる強化は今後の政策上非常に大切」。原田社長がこう述べた通り、マクドナルドはこの10月から、期間限定の新たな4つの商品とクリスマス商品を相次ぎ投入する予定だ。「チキンは調理方法、味付けなどにバラエティが出せる。日本人はチキンが好きだし、市場余地はまだまだある」(マクドナルド)のだ。

 では、迎え撃つ競合他社はどうなのか。「チキンのブランド認知はものすごい」とマクドナルド関係者も羨む日本ケンタッキー・フライド・チキンは負けていない。

 もともとKFCは、昨年度から既存店売上高(直営店)が前年度を上回るなど業績を崩していない。40周年記念として「オリジナルチキン」のバリューキャンペーンなどを行った7月は、既存店前年同月比が18.0%も増加。「7ピース以上購入で1ピース当たり40円引き」としたにもかかわらず、客単価も同5.3%増と絶好調だった。

 食欲の秋に向け、9月16日から10月6日までは、4ピース、6ピース、8ピースの「スマートバリューパック」を“お得なお試し価格”で販売する。「マクドナルドのチキン戦略を意識したものではない」(KFC)というが、同じく値下げした7月の実績を考えると、売り上げ増が期待できる。

 今のところ、両社は互いの市場を食い合うことなく、むしろチキン市場を活性化させている模様。果たしてこの“高回転”は今後も続くだろうか。

(「週刊ダイヤモンド編集部」 新井美江子)

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