国民投票で離脱派が勝利したことで、英国はどうなるのか。次期首相もEUとの交渉スケジュールも決まっていない中、先行きは不透明で混乱は長期化しそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 EU問題取材班)

ロンドンの若者の多くは、EU残留を支持した。国民投票の結果に、将来への不安を感じている Photo:Dan Kitwood/gettyimages

 英国で最近、世間をにぎわしている言葉がある。Brexitならぬ、Regrexit、後悔と離脱を組み合わせた造語だ。離脱に投票した人からも、「こんなに大変なことになるとは思わなかった」と後悔の声が上がっている。

 投票前の公約もほごにされている。離脱派の代表的存在である英国独立党(UKIP)のファラージ党首でさえ、「英国のEU(欧州連合)への拠出金は週3億5000万ポンドに達する」という主張が誤りで、EUからの補助金などを相殺すると1億数千万ポンド程度という残留派の主張が正しいことを認めた。「EUへの拠出金を国民への医療費サービスの財源にしよう」という主張が幻想にすぎないことも明らかになった。

 国民投票のやり直しを求める署名も390万人分を超えている。もっとも、「離脱派が1700万票以上も集めている中、離脱の是非そのものが再び問われる可能性はほとんどない」(吉田健一郎・みずほ総合研究所上席主任エコノミスト)とみられる。

 一部には、「国民投票に法的拘束力がないため、英国政府がEUに離脱通告をしなければ、EUに残留できる」という楽観論もあるが、「議会制民主主義発祥の国が民意を無視はできないだろう」という見方が主流だ。

 そもそも、キャメロン首相が国民投票でEU離脱の是非を問うという賭けに出たのは、UKIPの勢いを止め、保守党内部のEU懐疑派を納得させるためだったのだが、完全に裏目に出た。残留派が負けたのだ。

 誤算だったのは、国民がEU離脱そのものを望んだというより、反エスタブリッシュメント(支配階級)に走ったためだ。賃金が上がらないことに不満を持つ低所得層にしてみれば、移民に職を奪われているとの不満がある。下図のように、EUの東方拡大で、ポーランドなどの域内からの移民が急増している。