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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

英国のEU離脱を受け、中国共産党人たちがニヤリと微笑む理由

加藤嘉一
【第80回】 2016年7月5日
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英国のEU離脱を支持する――。
中国外交部が出した声明の裏側

英国のEU離脱を自国にとって好ましい状況と考える、中国共産党関係者は多い。背景には、どんな思惑があるのか

 「中国は英国・欧州関係をめぐる国民投票の結果を承知している。我々は英国国民の選択を尊重する。中国は一貫して戦略的高度と長期的角度から中英・中欧関係を発展させてきたし、欧州が自ら選択した発展の道を支持する次第である。英国と欧州が関連する交渉を通じてできるだけ早く合意に達することを望んでいる。繁栄・安定した欧州の存在は各方面の利益に符合すると考える」

 6月24日、英国社会が国民投票を通じて欧州連合(EU)離脱を選択したことを受けて、中国外交部の華春瑩報道官がこのようにコメントした。また、記者から続いた質問に対して、「中国は欧州一体化プロセスを支持しており、欧州が国際業務のなかで積極的な役割を果たしてくれることを願っている。我々は中国・欧州関係の未来に大いなる自信を抱いている」と付け加えた。

 私が眺める限り、中国は政府、企業家、知識人などを含め、一定程度において歴史的事件と言える英国のEU離脱劇を密かにウォッチしていた(一般大衆は英国の動向よりも、この期間行われているサッカーのEUROカップのほうに注目しているように見える)。英国のEU離脱という国民投票による選択は(2年間という過渡期のなかで一定の不確定要素は存在するものの)、日本だけでなく、中国にとっても多くのインプリケーションをもたらすことは必至であるし、様々な角度・視点からそれらを持続的に分析していく必要があるだろう。

 本連載のテーマは中国民主化研究である。したがって、英国EU離脱という事件が中国経済に与えるインパクト、英国・欧州との経済・貿易・金融関係、中国の対外戦略、国際関係などに与える影響に関しては議論せず、筆を改めることにする。本稿では、離脱劇が中国共産党政治の発展と将来にどのような影響をあたえるかという一点に焦点を絞って議論を進める。

 英国国民投票の結果が出た約1週間後、中国、特に首都北京は中国共産党成立95周年(7月1日)を大々的に祝った。本稿では、その場における習近平共産党総書記の談話もレビューしつつ、中国政治の今後の方向性をプレビューしたみたい。本連載で繰り返し主張してきたが、中国民主化研究とは、中国共産党研究である。
  
 早速だが、結論から述べたい。

 政治レベルの発展と展望という観点から見た場合、中国は今回の英国EU離脱を基本的に“歓迎”していると言っていいだろう。理由・動機であるが、冒頭で引用した外交部報道官のコメントにも体現されているように、中国は、世界各国、特に英国のように歴史的にも、国際的にも影響力のある西側国家が、自らの国情・体制・歴史・世論などに立脚した独自の進路を歩むことを支持する傾向にある。

 キーワードは「独自」「自主」である。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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