破竹の勢いで伸びてきたインバウンド(訪日外国人)需要に変調の兆しが見え始めた。この5月の訪日外客数(以下、訪日外国人)伸び率は大きく鈍化。加えて、1人当たりの消費額もマイナスに転じた。日本の本当の魅力・実力が試されようとしている。(「週刊ダイヤモンド」論説委員 原 英次郎)
訪日外国人数は大きく減速
日本政府観光局の調査によれば、訪日外国人数の前年同月比増加率は、1月52%増、2月36.4%増、3月31.7%増、4月18%増、5月15.3%増と、月を追うごとに伸び率が低下。5月には訪日外国人数自体も、208万人から189万人へと前月を下回った。さらに、観光庁の訪日外国人消費動向調査によれば、1~3月期の1人当たりの旅行支出も16万1746円、前年同期比で5.1%減少している。
変調の背景には「年初来の円高と中国を中心とする世界の景気減速」(日本総研調査部・菊池秀朗研究員)がある。図表は実質実効為替レートと訪日外国人数の推移を見たものだが、年初来の円高によって、伸び率が大きく低下しているのが分かる。
(図表)円高で増加率が減少する訪日外客数
──訪日外客数と実質実効為替レート(前年比)
菊地研究員によれば、消費の質・消費行動の面でも変化が見える。同研究員はインバウンドの旅行支出額で、全体の4割と圧倒的なシェアを占める中国人旅行者について分析している。