春節や夏休みだけでなく、もはや年中見られるようになった中国人観光客の爆買い。しかし、中国の消費者の動きは日本人以上に目まぐるしく変わる。中国人向けの情報発信や体験イベントなどを手掛けている徐向東・中国市場戦略研究所代表に、爆買いトレンドの現在について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

アリババの「通販祭り」は
1日で1.7兆円を売り上げた

――今年の春節も多くの中国人が爆買い目的で訪日しました。現在の爆買いをどう見ておられますか?

 引き続き訪日客の爆買いも好調ですが、実は昨年後半から「越境EC」、つまり中国に居ながら日本製品を購入する動きが活発化しています。毎年11月11日、(中国のeコマース大手)アリババ社は傘下のTモールで、半額セールが目玉の「通販祭り」を実施します。昨年の通販祭りの売上高は約1兆7000億円。たった1日でこれだけのモノが売れたのです。

爆買い対応で中国人に振り回される日本企業が取るべき正しい戦略爆買いは今年も絶好調だが、中国人は日本以上にトレンドの風向きがコロコロ変わる。昨年と同じように爆買いを捉えていると見誤る Photo:Reuter/AFLO

 この通販祭りでは、爆買いで人気アイテムとなった日本の化粧品などが飛ぶように売れていました。例えば、昨年夏によく売れていたフェイスマスクなどを並行輸入業者たちが日本で商品を買い占め、通販祭りで売ったのです。

 今や大連のスーパーでも「越境EC」コーナーが作られていて、やはり爆買いで大人気の「パーフェクトホイップ」(資生堂の洗顔料)が売られていました。日本で実際に手にしてから買いたいというニーズもありますから、越境ECが伸びても、爆買いがなくなってしまうとは考えていません。しかし、今後は越境ECと爆買いの両方を見て行かなければならないのは間違いありません。事実、昨年11月と12月、日本のドラッグストアは売上高が少し減りましたが、これは越境ECの拡大が原因なのではないかと、私は分析しています。

――どうすれば爆買い客に振り向いてもらえるか、多くの日本企業が試行錯誤しています。

 中国では、大手企業がテレビCMや雑誌広告などに大金を投じることを「空中爆弾」と呼んだりしますが、爆買いに関しては空中爆弾ではなく、口コミによって広がっていきました。日本製品は安全で安心、そして健康的。そんなイメージがウェイボー(微博・中国版Twitter)やウィシン(微信・中国版LINE)などのSNSで広がっていったのです。

 しかし、日本企業がこうした口コミトレンドをうまく分析し、効果的な訴求をできているとは言えません。爆買い現象は、日本企業の努力によって産まれたのではなく、むしろ口コミの広がりによって自然発生的に起きて、日本企業は結果的に潤っているだけなのです。