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本川裕の社会実情データ・エッセイ

草食男子は「食の肉離れ」原因説を真面目に探ってみた

本川 裕 [統計データ分析家]
【第4回】 2016年7月6日
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草食男子はいつ生まれたのか

 草食男子という言葉は、2006年10月にコラムニスト・編集者の深澤真紀氏によってはじめて使われ、2008~2009年には流行語となった。その後、この用語が示す若者の行動様式は一般化し、恋愛に淡白な自分の息子を見て「草食男子だなあ」と感じる親が私を含め多くなっていると思う。今や少子化の一要因としてこの草食化をあげる意見も簡単には否定できない説得力をもっているといえよう。

 しかし、実際のところ、草食男子は、長い間に徐々に現れてきたのか、それとも急に現れたのか、もし急に現れたのなら、何時頃からなのか、を示すデータを探していたが、なかなか遭遇できなかった。何が草食化の原因なのかを突き止めるにはそうしたデータを得ることが非常に重要なのだが、2000年代後半に関心が高まってから行われるようになった若者の意識調査などでは、現象の始まりを明らかにすることができないのである。昨年、やっと、こうした疑問に応じられるデータを発見したのでここで紹介したいと思う。

 古くから、企業の新人研修を行っている日本生産性本部では、毎年、参加企業の新入社員に対して「働くことの意識」調査を継続的に行っており、若者の1970年代からの長期的な意識変化を探ることができる。「入社した会社に一生勤めるつもりか」あるいは「社長になりたいか」といった設問の結果がしばしば新聞紙上を騒がせる調査である。この調査の中に、あまり関心を引かない設問として「職場以外では、どんな時に一番生きがいを感じますか」がある。選択肢の一項目として「親しい異性といるとき」があるが、これを選択した若者の割合で、異性間交遊への関心度をうかがうことが可能である。

 図に示したこの設問への回答では上位3つでほとんどが占められている。すなわち、3割台から4割台へとやや増加傾向の「友達や仲間とつきあっているとき」が最も多く、次に「スポーツや趣味に打ち込んでいるとき」が安定して3割台で続いている。第3番目の主要回答である「親しい異性といるとき」は、以前はほぼ2割で安定的に推移していたが、バブル時代の1980年代後半から90年代前半にやや高まった後、2000年ごろを境に傾向的に低下がはじまり、最近では1割を下回っている。

 以前には高校や大学のクラスには、かならずといっていいほど、5人に1人ぐらいの割合で、同性同士の遊びよりも優先して、女の子とのつきあいに生きがいを感じているように見える者がいたものである。こういう異性間交遊優先の者が2000年頃を境に十数年で半減したのである。これを草食化の進展、あるいは草食男子の出現といってもよいと思う。

草食男子はいつごろ現れたか

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本川 裕 [統計データ分析家]

統計データ分析家。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師。1951年生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業。同大学院単位取得済修了。(財)国民経済研究協会研究部長、常務理事を歴任。現在、アルファ社会科学(株)主席研究員。インターネット上で「社会実情データ図録」サイトを主宰。

 


本川裕の社会実情データ・エッセイ

本連載では、統計データの動きを独自に整理、グラフ化することによって、意外な社会の動きやわが国の状況を追って行きたいと考えている。もっとも堅苦しいものではなく、趣味的な個人の嗜好も含めたざっくばらんなものとしたい。体系的な思想というよりエッセイ形式で人間習俗(モラル)を観察したモラリストの伝統に連なれればと考え、連載タイトルにエッセイという用語を含めた。

 

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