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岸博幸の政策ウォッチ

英EU離脱とトランプ躍進で危惧される「エリートの弱体化」

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第37回】 2016年7月8日
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英国のEU離脱の背景には、エリート層の意見に耳を貸さない一般大衆の存在があったようです

 英国のEU離脱という国民投票の結果がいまだに世界経済を揺るがしています。そして、米国の大統領選ではトランプ旋風がいまだに続き、もしトランプが大統領選に勝った場合は、これも世界経済の不安要因と見られています。

 そして、この両方の現象の捉え方としては、ポピュリズムが蔓延した結果という見方が一般的です。移民の増加などグローバル化により低所得者層の賃金が上がらず、雇用が不安定になる中で、そうした層がグローバル化に反対。また政治家やビジネスリーダー、エコノミストといったいわゆるエリートたちの意見を信用しなくなったという見立てです。

一般大衆は“公平性”、エリートは“効率性”を重視

 実際、5月に英国のエコノミスト639人を対象に行われた調査では、その88%が、EU離脱となったら英国の経済成長は減速して雇用も悪化すると回答しました。また、別の調査では、40人の著名エコノミストのうち、わずか2人だけがEU離脱派の主張に賛成でした。それにもかかわらず、国民投票では投票者の52%が離脱に賛成しました。

 この数字からは、確かに英国では一般大衆がエリートたちの意見を信用しなくなったと見ることもできます。

 エリートたちの主張は、煎じ詰めればグローバル化を進めて経済の“効率性”を高めることにより、経済成長を実現してGDPのパイを拡大しようということに尽きます。この主張は経済学的には正しいことを考えると、それでは英国の一般大衆は怒りで合理的な思考をできなくなったのでしょうか、それとも理解しているのに敢えてそれと反対の立場を取ったのでしょうか?

 この点について考える参考となる面白い論文が、米国で昨年発表されました。人は金銭価値のあるトークン(メダル)のやり取りをする中でどういう行動をするかという実験についての論文です。実験参加者がシミュレーションの中で、トークンを自分だけで独占しようとするか、または他人とトークンをシェアしようとするかを調べているのですが、面白いのは、もし参加者が他人とシェアする場合、自分だけで独占する場合に比べてトークンの総量が減少するように設計されていることです。市場の効率性(=トークンの量の最大化)と公平性の間にトレードオフを設けたのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

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