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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国の若き農業者たちが日本視察で見せた熱意

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第282回】 2016年7月8日
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 ここ数年、中国各地で農業に対する関心が高まっている。これまでの工業優先の政策で、農業や自然環境の保護がないがしろにされたばかりではなく、居住環境まで破壊された現象も各地で広く見られている。こうした問題に対する反省もあり、農業を再出発させようと心がける人が増えている。

 しかもそこには、ある共通現象が見られる。大都市でそれなりに成功した高学歴者が多い。女性が占める割合も高い。中には、大都市で手に入れた安定した生活を敢えて手放して、自分の出身地の村に戻って、村おこしに情熱的に力を入れる若者も登場している。

 5、6年前から私はSNSでこのグループの人間と知り合い、ずっとその観察と応援を続けている。彼らの努力と行動に中国の将来の描き方、中国農業の模索が読み取れると思うからだ。

 その中の代表的な人物の一人は、陳統奎という36歳の青年だ。中国新農業従事者の間ではスター的な人物で、南京大学を卒業し、かつては「南風窓」という雑誌の記者だった。2009年、故郷の海南島火山村に戻り、村人らを率いて社区(コミュニティ)を創業し、民宿事業を試行錯誤で始めた。

 インターネット時代の風雲児らしく、その創業にもインターネットの力を最大限に活用している。自分の資金を民宿に全部つぎ込んでも足りないと気づき、銀行からも借りられないのを見て、インターネットを通して行動を起こした。一人一口1万元、利息は8%、年間7日の無料宿泊の提供、返済期は3年という条件で出資を募った。あっと言う間に必要な資金を集められた。

 やがて民宿事業から手を広げていった。火山村のライチのブランドを作り、おしゃれな手土産も作り出すようにした。その民宿と火山村は復旦大学、浙江大学など中国の有名大学の社会調査の基地にもなり、村おこし事業が軌道に乗り始めた。その努力を見て地元の政府も刺激を受け、支援に動き出した。井戸や村内の道路を作るための資金を提供したりした。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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