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出口治明の提言:日本の優先順位

「政府」とは何か、個人の視点で原点から考える

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第146回】 2016年7月26日
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 参議院議員選挙が終わったと思ったら今度は都知事選挙である。我々市民は選挙を通じて政府を創っていくのだが(知事は直接選挙、首相は議院内閣制を通じた間接選挙という違いはあるが)、今回は、市民と政府の関係を今一度原点に立ち戻って考察してみたい。

「政府」は公共財・
公共サービスの提供から始まった

 東京は世界の首都の中でも清潔で美しい町だ。それは何故か。毎日のようにきちんと清掃(ゴミ集めを含む)がなされているからだ。ところで、今からベンチャー企業を興して東京の清掃を行いたいという人は、まずいないだろう。そんなことをしても儲からないことが分かっているからだ。このように人間社会を維持していくためには必要不可欠だが誰もがやりたがらない仕事を、一般には公共財・公共サービスの提供と呼んでいる。

 そして、人間は、公共財・公共サービスの提供(給付と呼んでもいい)を行わせるために政府を創ったのである。では、そのための財源はどうするか。近代国家では、原則としてその地域に住む人々から強制的に集めることにしたのである。それが税金である(社会保険料はいわば目的税の一種であって、広義では税金に含まれる)。ここから「負担(税・社会保険料)が給付(公共財・公共サービスの提供)である」という原則が生まれる。政府を維持する費用を考慮すると、「給付は負担の枠内でしか行い得ない」ということもよく分かるだろう。

小さい政府の原点を
募金で考えてみよう

街頭で募金を呼びかけている。アフリカの子どもたちにミルクを贈るという。あなたは100円を募金した。その内、いくらぐらいがアフリカの子どもたちに届いてほしいと思うだろうか。70円~80円は届いてほしいと思う人が多いのではないか。20円~30円でいいと思う人はきっと少ないに違いない。これが「小さい政府」の基本的なコンセプトである。つまり、負担も給付も双方ともできるだけシンプルに設計して、「間に立つ政府のオペレーションコストをミニマムにしよう」とする考え方が世界では一般的なのだ。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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