尖閣諸島沖でのこの一件がもたらしたのは「新時代の中国リスク」といえるだろう。日本のみならず周辺のアジア諸国、そしてアメリカまでもが、強大になった中国を認めざるを得ない現実を突きつけられた。日中の力関係の逆転が露呈した今、日本、あるいは日本人は中国とどう向き合うべきなのか。そのヒントを探るべく、事件から1ヵ月、もう一度中国国内での報道や論調を振り返ってみよう。

5度にわたる大使呼び出しも
民主党に意図は伝わらなかった!?

 9月7日に起きた尖閣諸島沖で中国漁船との接触事件とそれ以降の動きを下表に整理したのでご覧いただきたい。満州事変勃発(柳条湖事件)の79周年を迎える9月18日までに、外交部は合計5回、駐中国大使丹羽宇一郎大使を呼び、会見の場を持った(下表(1)~(5))。そこで中国側が日本に対し、「賢明な政治判断」を促してきた経緯が見て取れる。

 事件が起きてから3日後の10日には3回目の呼び出しを行っているが、期待通りの展開は引き出せず、中国政府は東シナ海ガス田開発の条約締結交渉を延期させるという初めての対抗措置を講じた。中国側にあったのは「ことを長期化させたくない」という意図のようだが、果たしてこれを丹羽大使はどう読んだのか。またこの頃、民主党の代表選挙のため、日本政府内は政治的空白期間だったことにも留意しておく必要があるだろう。