大きく立ちはだかる
遺伝病問題の3つの障壁

 否。そんな勧善懲悪で片づけられない3層の障壁が、この問題には立ちはだかっている。

 まず、第1に、ブリーダーが譲渡前に検査を受けようにも、多くの遺伝病は、検査法や診断法が確立されていないし、遺伝病自体の研究も進んでいない。

 第2に、獣医師やペットショップが、販売前に発見できる遺伝病は限られている。

 そして、第3に、生後4ヵ月~1年ぐらい経過した後の販売なら、病気の有無を見極められる確率は若干高まる。しかし現状は「消費者が求める、より小さくて、かわいい」生後45日からの販売が一般的で、平成25年に施行され、欧米では常識になっている「8週齢未満の犬猫を販売してはならない」という規制さえ、徹底されていない。

 8週齢未満で親兄弟から引き離された犬猫は、吠える、噛む、なつかないといった問題行動が多く、見た目のかわいらしさで衝動買いしたものの手におえなくなった飼い主が、動物保護センターに持ち込むケースが多く、殺処分が減らない原因の1つになっている。

 研究者、獣医師、ブリーダー、ペットショップ、そしてペットを飼いたい消費者(生命ある者を引き取るのに、この言葉は正直使いたくない。生命を消費する…いやな言葉だ)も、国を挙げて変わらなければ、この問題は解決できないだろう。

多くの獣医師は遺伝病を敬遠
筆者の愛犬も遺伝病で苦労

「獣医師の多くは、遺伝病と診断したとしても、飼い主さんに告げるのを躊躇する場合がある」

 山根氏はさらにこんな衝撃的な話をした。

遺伝病を発症した筆者の愛犬。ミニチュアシュナウザーとミニチュアダックスのミックス犬だ。「ミックス犬は病気に強く、遺伝病も滅多にない」と言われるが、単なるイメージだ

「いずれも治療法が確立されていないため、治しきることはできません。症状を緩和させる程度の対症療法しかないのです。獣医師は何もできないので、多くの動物病院は遺伝病を敬遠します」

 実は、我が家の愛犬は生後7ヵ月の時、行きつけの動物病院で「エナメル質形成不全」という遺伝病であることを告げられた。すべての歯のエナメル質が形成されていないため、虫歯になりやすく、「普通にしていたらすぐに歯が全部なくなってしまうから気をつけてあげて」と。だが、気をつけてあげようにも、獣医師は歯をこまめに磨いてあげること以外、アドバイスはくれなかった。というかできなかったのだろう。ちなみにペットショップとの契約の際には、「いたって健康」であることを“保証”する獣医の診断書を渡された。