今から9年前、まだ我が家の周辺に動物の歯医者さんはなく、相談に訪れた他の数件の動物病院も、「治療手段はない」と謝るばかり。ただ、1人の獣医師が2ヵ月後、「地域初の動物の歯医者さんが開業する予定があるから紹介状を書いてあげる」と提案してくれた。

 渡りに船とありがたく紹介してもらい、2ヵ月後、動物の歯医者さんの診察を受けた愛犬は、翌日さっそく半日入院し、全身麻酔下でエナメル質に変わる補填材を塗ってもらい、治療完了。治療費の合計は9万円。保険には入っていなかったので、懐はだいぶ痛んだが、お陰様で現在も歯は全部残っており、元気にもりもりドッグフードを食べている。

 一度の処置でなんとかなる病気で助かったと思う。それでも、1歳にもならないうちに歯が全部なくなってしまうかも…という宣告には震撼させられた。また、「先天性」と言われても、飼いはじめてから5ヵ月経っていたので、ペットショップに苦情を言うという発想も思い浮かばなかった。

 仮に言ったとして、「では同じ犬種の健康な犬と交換します」と応じられても困るし、ペットショップに返した場合、殺処分という悲劇が彼を待っていると想像するだけでも、いたたまれない。

わずか6歳で目が見えなくなったパグ
1歳で歯が全部なくなっていたチワワ

 改めて思い返すと、8歳で足腰が立たなくなり犬用の歩行補助器具をつけているコーギー、わずか6歳にして白内障を発症し目がほとんど見えなくなったパグ、1歳にして歯が全部なくなっていたチワワ…私の周囲だけでも、これだけの病犬がいる。

 飼い主たちはいずれも遺伝病だとは思っておらず(遺伝病ではないかもしれないが)、「腰に負担をかけるような運動をさせてしまったのだろうか」「栄養が足りなかったのだろうか」などと思い悩み、もっと注意してあげていればよかったと、自分を責めている。

 取材で出会った獣医師の中には、「ほとんどの獣医師は、遺伝病であるとは伝えないはずですよ」と明言する人もいた。

 私のように遺伝病だと教えてもらった例は稀であり、ラッキーなのかもしれない。