ペットショップとブリーダーが協力
「繁殖の現場」から減らしていくしかない

「この問題は、ペットショップとブリーダーが協力し、繁殖の現場から遺伝子病を減らしていくしかない」

『国際小動物医学研究所』の筒井敏彦所長は根っからの動物好き。取材の日、開口一番で話し出したのは、研究所近くの親水公園の鴨の話題だった

 国際小動物医学研究所(BioPlus)の筒井敏彦所長は言う。

 筒井所長は、日本獣医生命科学大学の名誉教授で、ペットの繁殖にまつわる研究を40年に渡って行ってきた人。

 同研究所は、大手のペット関連会社(株式会社AHB)が運営する世界でも珍しい研究施設であり、日本で唯一の小動物の繁殖障害専門診療所を併設。遺伝子病や感染病等の研究に加え、様々な検査・診断・診療・手術等にも対応するほか、特定の遺伝病を発症しない子犬子猫を世の中に広げるための遺伝子病検査や、契約する約3000人のブリーダーに対する啓蒙活動・情報発信等を行っている。

会員ブリーダーを対象としたシンポジウムの様子。年一回、全国各地で巡回開催し、カンや経験に頼らない、学術的で科学的な、正しい知識や最新情報の共有を図っている

 現在、ペットの流通ルートは3種類ある。

(1)契約ブリーダーから直接販売業者が仕入れ、消費者へ。(株式会社AHB)
(2)ブリーダーが犬猫をオークションに出品し、販売業者が仕入れて消費者へ。
(3)ブリーダーが直接消費者に販売する。

 主流は(2)のルートで約70%を占めている。

「遺伝病等の知識を積極的に学び、適正な繁殖をしている良質のブリーダーから、消費者が直接、ペットを購入するのがあたりまえになるべき」

 前出の山根氏はそう言っていたが、AHBのように、業者が研究から情報発信、遺伝子検査の実施までを請け負うシステムが普及すれば、国としての対策を待つまでもなく、問題は加速度的に解決に向かうような気がする。

「我々が10年かけて研究してきたことを、ブリーダーの皆さんに1年で伝えています。理解していただき、適正な繁殖ができるブリーダーが増えれば、問題解決は大きく前進するでしょう」

 とはいえ、取り組みはまだ日が浅い。AHB内でも、遺伝病を発症するペットはいるはずだが、その場合はどうしているのだろう。

「当社に殺処分という言葉はありません。診療所が引き取り、どんな症状であれ、愛情を持って終生飼養しています。社員が個人的に引き取っているケースも多いですよ」

 こうした同社の取り組みは明るいニュースだが、ペットを取り巻く環境には依然、闇がある。

 心ないブリーダーが、狭い場所でケージを何段も重ね、糞尿まみれの状態でペットを飼い、無計画な近親交配を繰り返している例や、動物保護センターから引き取りを拒否された犬猫が民間業者の手で大量に殺処分されている例、手術の練習台や輸血用として売却されている例等、悲惨な事例を挙げたらきりがない。

 全体としてのモラルの低さは、未熟な業界であることの証明とも言える。

 冒頭で、「僕には犬を飼う資格がない」というTMさんのつぶやきを紹介したが、遺伝病の問題をこのまま放置し続けるとしたら、私たち日本人こそ、「犬猫を飼う資格はない」のではないだろうか。